日向みかんは、今日もけだるい。たぶん、世界を救わない。(2)
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モデル:flux1-schnell
第2話 橙色の衝撃 💥
「…は?」
体から漏れた声は、
自分のものではないみたいに響いた。
軽い。
やたら軽い。
さっきまでリュックの重さすら
鬱陶しかったのに。
🍊💨
みかん色のスーツは、
体に吸い付くようにフィットして、
でも不思議と動きやすい。
いや、動きやすいどころじゃない。
体が、勝手に動きたがってる。
まるで、
剥きたてのみかんの房が、
プリッ、と弾けるみたいに。
👟✨
目の前のダスクは、
相変わらずドロリとしていて、
無数の目がキョロキョロと
私を見ている。
気配は、重くて、冷たい。
まるで、
暖房の消えた部屋で、
一日中何もせずにいた時の、
あの底冷えする虚無感みたいだ。
「…やらないと、っすか」。
体が、勝手に、
ダスクに向かって走り出した。
地面を蹴る感触が、
やけに鮮明だ。
💨💨
ダスクが、ドロリとした腕を振り上げてきた。
逃げないと。
頭で考えるより早く、
体が横っ飛びする。
速い。
なにこれ。
いつも体育はサボってたのに。
😮
避けた地面が、
ダスクの腕が触れた瞬間、
灰色の染みが広がっていく。
あ、これ、ヤバいやつだ。
私は、咄嗟に
右手に力を込めた。
✊💥
すると、
腕のプロテクターの一部が、
パキパキと音を立てて
鋭い刃のような形に変わった。
…みかんの皮?
いや、硬い。
カチカチだ。
しかも、刃先から
微かに甘酸っぱい香りがする。
斬れるのか、これ。
「…えいっ、すか?」
ダスクの胴体目掛けて、
思い切りその刃を振り下ろした。
🔪✨
ブシュ!
手応えがあった。
灰色のドロドロが、
切断面からジュワリと
変な音を立てて蒸発する。
効く!
🎉
いける。
いけるかもしれない。
私の体から溢れるみかん色の力は、
ダスクの灰色とは真逆の性質を持ってる。
よし、と、
次に、腰のあたりにある
みかんの房みたいな飾りに
手を触れてみた。
すると、
それがフワリと宙に浮き、
五つに分裂する。
まるで、
房がバラバラになったみたいに。
🍊🍊🍊🍊🍊
「うわ…。」
なんか、キモいっすね。
でも、これをどう使う?
ダスクが再び腕を伸ばしてきた。
その腕に、分裂した房を
「えいっ」と投げつけてみる。
ポフン!
房はダスクに張り付き、
次の瞬間、
プチプチッと音を立てて
細い繊維のようなものが
ダスクの体を絡め取った。
まるで、
みかんの白いスジみたいに。
🕸️
ダスクの動きが止まる!
いける! 今だ!
そう思った、その時。
ドロリとしたダスクの体から、
無数の、
灰色の、
薄っぺらい言葉が、
空気のように漂ってきた。
👂
「どうせ、無駄」
「お前なんて、何もできない」
「誰もお前に期待してない」
「頑張ったって、報われない」
「疲れるだけだろ? もうやめろ」
それは、
心の隙間に
スルスルと入り込んでくる、
優しい毒みたいだった。
😫
体が、重い。
さっきまでの軽やかさが、
あっという間に消えていく。
みかん色の輝きが、
薄れていくのが分かった。
あ、これ、
やばいパターンっすね。
あの、コンビニのみかんを
食べた時とは違う、
力が抜けていく感覚。
まるで、
皮を全部剥かれて、
白いスジも取られて、
房一つ一つがバラバラになって、
ジュースを全部絞り取られた後の、
カラッカラの、
カスになったみたいな気分。
😩
ダスクの目が、
私を見て、増殖していく。
「絶望しろ」
「諦めろ」
「どうでもいい、だろ?」
頭の中に、
いつも自分が言ってた
あの言葉が響く。
「どうでもいいっす」。
そうだ。
全部、どうでもいいんだ。
こんなこと、
私がやったって意味ない。
力が、完全に抜けそうになる。
変身が、解けそうになる。
🍊❌
その時、
脳裏に、
あの、
鮮やかな、
オレンジ色が、
フラッシュバックした。
🍊✨
夏の強い日差しの中で見た、
たわわに実る、
あの色。
キンと冷やして、
一口齧った時の、
あの全身に染み渡る、
突き抜けるような甘さ。
あの、
「生きている」って感じ。
そして、
灰色の街で、
唯一、
私に「色」と「力」をくれた、
あのコンビニのみかん。
あれは、
「どうでもいい」ものなんかじゃ、
なかった。
🔥
ドクン!
また、心臓が強く脈打つ。
「どうでもよく、ないっす…!」
絞り出した声と共に、
薄れかけていたみかん色が、
再び強く輝き始める。
体の奥底から、
熱い何かが湧き上がる。
それは、怒り?
悔しさ?
…いや、
もっと、プリッとした、
生きる、って感覚だ。
みかんの房みたいに。
[ (3) につづく ]