第2話：練り物碑文とカニカマ号の設計図🧊🪐 夜が明ける頃、工場の屋上には、冷えた空気に包まれながら、カニカマリアと社長のふたりが立っていた。 屋上の隅には、錆びついた看板が立っている。そこには風化しかけた文字でこう刻まれていた。 「練り物の霊、此処に宿りて星と通ず」 「ここが……練り物碑文……。確かにこのパターン、我が星の“連繊文字”に似ていますわ……！」 カニカマリアの瞳が、夜明けの陽光を受けて金色に輝く。 彼女の指先が、碑文の凹凸をなぞるたびに、石碑の奥から低く共鳴するような“音”が立ちのぼる。 🧠「……セイキズ……カニカマ……カミナリ、リョウイキ……ケイセイ……」🧠 「来たッ！今、設計図の第二層がダウンロードされましたわッ……！」 「マリアちゃん、その“カミナリ領域”ってのが、宇宙船の推進装置に関係してんのか？」 「ええ……正確には“蒸しカマ反応炉”。 　あの領域では、電子とんぼのような形の“アゲカマ粒子”が空間を移動するのです。 　それをカニカマの繊維で捕まえることで、宇宙を圧縮しながら前進できる仕組みでして……」 「カニカマ、すげぇな……」 社長は、よくわからないながらもとりあえず感心していた。 だがその時、突如として空に閃光が走った⚡️🌌 工場の真上、薄雲を割って降りてくる何か――黒く、禍々しく、異様にデコボコした球体。 その表面には、見覚えのあるロゴが刻まれていた。 「……あれはッ……練り物帝国の無人偵察球《チクワ型4号機》……！」 「……チクワ、だと……ッ！？なんて禍々しい形状だ……」 巨大チクワ。だが穴は塞がれており、レーザー発射孔になっていた。 光の粒子が、うなり声のように空を振動させる。 「社長、避けてくださいッ！チクワ、カニカマッ！」 カニカマリアの身体が、突然発光した。 彼女の赤白の髪が宙に舞い、耳元から浮かび上がる「練り物紋様」。 それは、練り物星でのみ習得可能な“練術”―― 中でも高位の技、「繊維展開式・初段：練糸結界《カニカマヴェール》」だった。 放たれたビームが、光の膜に当たり、冷凍室の匂いを残して消えた。 「ふぅ……ふふ、私の心は今、蒸したてカニカマのように熱くなっておりますわ……」 「……なんか、助かった気がするけど、いろいろ飛び越えてるな……」 「社長、急ぎましょう。あのチクワ型4号機が来たということは、 　設計図が漏れた可能性がございます。情報漏洩は、練り物文化の死に直結しますわ」 そのまま二人は、工場の地下にある古びた保管庫へと足を踏み入れた。 電球はちらつき、段ボールには「199X年製カニ風味練物（試作）」と殴り書き。 「ここ……何度か見たことあるけど、実は使ってなかったんだよな。何か……あったのか？」 カニカマリアが段ボールに手をかける。 開けた瞬間、強烈な潮の香りが爆発した💥 「カニカマッ！？こ、これは……我が星の“原型練物”……ッ！」 中から現れたのは、真空パックされた一本のカニカマ。 だが明らかに普通ではない。赤と白の繊維が三次元的に折り重なり、見る者の空間認識をねじ曲げる。 「まるで……宇宙そのものを巻き取ったような……」 「これは、“始まりのカニカマ”。 　我が星が最初に練り上げた――時空超越練り物……！」 カニカマリアはそっとその一本を取り出し、自らの額に当てた。 「カニカマム……！」 次の瞬間、地下保管庫の壁一面に、青白く輝く“設計図”が浮かび上がった。 宇宙船の骨格構造、エネルギー変換機構、練り物テクノロジーの結晶。 カニカマ号の全貌が、ついに明らかになったのだった🚀✨ 「さぁ、社長……建造を始めましょう。 　地球の練り物技術を、宇宙へ昇華させる時が来たのです！」 その言葉に、社長は頷いた。 「よぉし！明日から“宇宙練り物開発部”を立ち上げるぞ！目指せ、宇宙出荷！」 「カニカマム！！🌟🌊」 ──そのとき、保管庫の奥の棚がカタリと揺れた。 埃をかぶった古いノートが一冊、ゆっくりと床に落ちる。 そこには「第零練術・練り物帝国の真実」と書かれていた。 それが、後にカニカマリアの信念を揺るがす“裏練り物史”へとつながるとは―― この時、誰も予測していなかったのだった。 🦀📖🍥つづく。