朝の勤行（ごんぎょう）が終わった静かな境内。朝日が木々の間から差し込み、本堂の屋根を金色に染めていく。蝉の声だけが響く、いつもの朝。でも、今日はいつもと違う。私の心臓は、まるで太鼓みたいにドキドキと高鳴っている。 だって、今日、私たちは初めてのライブ配信をするんだから！ 私の名前は歌音（かのん）。この古びたお寺の娘。そして、見習い尼僧。さらに、最近は「寺ドル」なんて呼ばれたりもする、ちょっと変わった存在。 このお寺、正式名称は音羽寺（おとわでら）。私の家であり、修行の場。そして、今では私たちの活動拠点。 築三百年の歴史を持つこのお寺は、私が物心ついた時から、静かにそこに佇んでいた。深い緑に囲まれ、鳥のさえずりと川のせせらぎ️が絶えない、心安らぐ場所。 でも、近年は過疎化の影響で檀家（だんか）さんも減り、お寺の経営は火の車だった。 そんな状況を何とかしたい！私がそう思ったのは、去年の夏祭りのこと。 境内で歌を歌った時、集まった人たちの笑顔が、夕焼けみたいに温かかったから。「歌には、人を繋ぐ力があるのかもしれない」そう思ったんだ。 その時、ふと頭に浮かんだのが、「お寺をアイドル活動の拠点にしたらどうだろう？」という、突拍子もないアイデアだった。 最初は住職である父を含め、周りの大人たちには大反対された。「お寺でアイドルなんて、不謹慎だ！」って。 そりゃそうだよね。尼僧がアイドルなんて、前代未聞だもん。 でも、私は諦めなかった。何度も何度も父に掛け合い、熱意を伝え続けた。そして、最終的には、ある条件付きで許可をもらうことができた。 その条件とは、「仏教の教えを歌を通して伝えること」「お寺の品位を落とさないこと」の二つ。 よし、それならできる！私はそう確信した。 そして、幼馴染の心美（ここみ）と、近所のお祭り好きの陽太（ようた）を巻き込み、「寺ドル」プロジェクトがスタートしたんだ。 心美は作詞作曲担当。クールで頭脳明晰な彼女は、私たちの活動のブレーン。陽太はダンスの振り付けと、SNSでの情報発信担当。明るくノリの良い彼は、ムードメーカー。 私たちは、読経（お経を読むこと）の練習の合間に歌の練習をし、境内をステージに見立ててダンスの練習をした。 最初はぎこちなかった私たちのパフォーマンスも、練習を重ねるうちに、だんだんと形になっていった。 私たちの音楽は、仏教音楽と現代のポップスを融合させた、ちょっと変わったもの。 例えば、「諸行無常（しょぎょうむじょう）」という仏教の教えがあるんだけど、これは「この世のすべてのものは常に変化していて、同じ状態を保つことはない」という意味。 この教えをテーマにした曲では、アップテンポなメロディーに乗せて、「変わっていくこと、それもまた美しい」と歌う。 最初は戸惑っていたお寺の人たちも、私たちの歌を聴くうちに、次第に応援してくれるようになった。 そして、今日。ついに、私たちが初めてのライブ配信をする日を迎えたんだ。 緊張で手が震えるけど、胸の中は希望でいっぱい。私たちの歌が、誰かの心に届きますように。 配信開始まであと10分。心臓のドキドキはピークに達していた。まるで、これから大舞台に立つ役者のよう。いや、私たちにとっては、まさに大舞台なんだ。 「歌音、大丈夫？顔、真っ青だよ？」心美が心配そうに声をかけてきた。 「うん、大丈夫。ちょっと緊張してるだけ。」そう答えたものの、実際は全然大丈夫じゃなかった。 だって、このライブ配信が成功するかどうかで、お寺の未来が決まるかもしれないんだから。 私たちの活動は、インターネットを通じて少しずつ広まっていった。SNSで動画を投稿したり、地元のイベントに参加したりするうちに、「寺ドル」という存在を知ってくれる人が増えてきたんだ。 中には、「お経と歌を混ぜるなんて、けしからん！」という批判的な意見もあったけど、それ以上に、「面白い！」「応援してる！」という温かいメッセージがたくさん届いた。 特に、私たちの歌を聴いて、「心が安らいだ」「元気が出た」と言ってくれる人がいることが、本当に嬉しかった。 「仏教って、難しい教えだと思われがちだけど、実は、私たちの日常に寄り添う、温かい教えなんだ。」 父はいつもそう言っていた。私も、歌を通して、そのことを伝えたいと思っていた。 （つづく） 全部を載せたいのですが制限があるため、もし続きが気になる方は私のブログ「MochiMermaid’s AI Art Adventures」をご覧ください。気に入っていただけたらハートマークをタップお願いします！