静かな森の中で、私は深呼吸をしました。美智子という名前をいただいてから25年。まさか結婚式の日を、大きなお腹と共に迎えることになるとは思ってもみませんでした。 木漏れ日が純白のウェディングドレスに降り注ぎ、キラキラと輝く小さなビジュー装飾が光を散りばめています。ドレスは特注で、7ヶ月のお腹にぴったりとフィットするよう、優しくデザインされました。胸元のクロスデザインから、ふんわりと広がるAラインのシルエットは、まるで森の妖精のよう。胸元の白いバラとグリーンの小さな葉が、森の雰囲気と不思議なほど調和しています。 ティアラと共に頭に乗せたベールは、風に揺られるたびに、まるで白い蝶が舞うような優雅さを演出してくれます。首元には、母から借りた思い出のネックレス。何代も受け継がれてきた宝物が、今日は私の幸せを見守ってくれています。 メイクアップアーティストが丁寧に仕上げてくれた赤みがかったリップカラーは、白無垢のような純白のドレスに映える、控えめながら存在感のある差し色になっています。黒髪は緩やかにアップにまとめられ、はらりと落ちる横髪が柔らかな表情を作り出しています。 ここ、緑深い森の中での撮影を選んだのは、夫となる人のアイデアでした。都会の喧騒から離れ、悠久の時を刻む木々に囲まれて、新しい命と新しい人生の始まりを祝福してもらいたいと。背の高い木々は静かに私たちを見守り、優しい木漏れ日は祝福の光のように降り注いでいます。 お腹の中で、確かな存在感を示す私たちの子供。両手で優しく包み込むと、幸せな気持ちが溢れてきます。結婚式を終えたら、私たちは夫婦に。そしてその数ヶ月後には、親子という新しい絆が生まれます。一度に二つの幸せが重なることに、時々現実感が追いつかなくなることもあります。 でも、この森に立って、命の循環を感じていると、すべてが自然の流れのように思えてきます。新芽が芽吹き、花が咲き、実を結び、また新しい命が生まれる。私たちの人生も、そんな自然の営みの一部なのかもしれません。 今日の私の表情には、どこか穏やかな余裕があります。それは、これから始まる新しい人生への期待と、確かな愛情があるから。深い緑に囲まれた森の中で、私は静かに微笑みます。この瞬間を、生まれてくる子供にいつか語って聞かせたいと思います。 「あなたは、私たちの結婚式にも立ち会っていたのよ」と。 きっとその時は、この森で感じた穏やかな幸せを、家族三人で分かち合えているはず。そう思うと、この特別な一日が、まるで未来への贈り物のように感じられます。私のお腹の中で、新しい命が静かに成長を続けている。この森と共に、私たち家族の物語もまた、ゆっくりと、でも確実に紡がれていくのです。