私の名はエアリエル。神々から授かった蝶の羽を持つ最後の守護者である。私の羽は青く輝く結晶のように美しく、その姿は古の詩人たちが詠った天界の使者を思わせると人々は言う。純白のドレスに身を包み、青い髪を風になびかせながら、この高き塔の上から人々の暮らす街を見下ろす。 私たちの種族は太古の昔から、人々と神々の架け橋として存在してきた。私の羽には神聖な力が宿り、世界の均衡を保つ力を持つ。だが、その力は諸刃の剣。自由に空を舞えば舞うほど、私の存在が世界の理に影響を及ぼすのだ。 幼い頃から、私は自由を夢見てきた。蒼い蝶たちが舞う様を眺めながら、彼らのように気ままに飛び立てる日を待ち焦がれた。今では確かに大きな翼を持ち、望むがままに空を駆けることができる。だが、その力には重い代償が伴う。私の一振りの翼が、時として嵐を呼び、一滴の涙が大地を揺るがすことさえある。 街の灯りが瞬く夜景を見下ろしながら、私は日々、この力の使い方に思い悩む。純白の衣装は私の清らかな使命の象徴であり、青く輝く装飾は神々からの祝福の証。だが、それらは同時に私を縛る鎖でもある。 ある日、一人の少年が私の前に現れた。彼は私の羽に魅せられ、「どうして空を自由に飛べるのに、いつもこの塔に留まっているのですか？」と問うた。その瞬間、私の心は大きく揺れた。確かに、私は望めば今すぐにでもこの塔を離れ、遠く果てない空へと飛び立つことができる。だが、それは同時に、私に課せられた責務を放棄することを意味する。 夜空に輝く星々の下で、私は決意を固めた。この力を持つ者として、私には守るべきものがある。自由な空への憧れを胸に秘めながらも、私は人々を見守り続けることを選んだ。時折、青い蝶が私の周りを舞い、私の決意を祝福するかのように光を放つ。 私の姿は、夜明けの青い空に溶け込んでいく。純白の衣装は朝日に輝き、神々しい光を放つ。塔の上から見える街並みは、まるで私の羽の上に広がる模様のように美しい。私は深く息を吸い込み、その生命の力を感じる。この街で生きる人々の願いや祈り、喜びや悲しみ、全てを受け止めることが、私に与えられた使命なのだ。 最後の守護者として、私は自由と責任の間で永遠に揺れ動く運命を受け入れた。それは時として孤独な道かもしれない。だが、私の存在が世界の調和を保つ一助となるのなら、この運命を受け入れることこそが、真の自由への道なのかもしれない。青い蝶たちは今日も私の周りを舞い、その羽は希望の光を放ちながら、新たな夜明けを待っている。