琥珀色の約束 - Whispers in Bitter Chocolate
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モデル:bluePencilXL_v700
香り立つビターチョコレートの甘い誘惑と、琥珀色に輝くカクテルグラス。私の人生が大きく変わったのは、そんな香りと光に満ちた一瞬からでした。
私、橘凛子は大手広告代理店のクリエイティブディレクターとして、日々激務をこなしています。今年で32歳。毎日終電近くまで働き、週末も企画書作りに追われる毎日です。
同僚からは「完璧な橘さん」と呼ばれ、確かにプレゼンテーションは常に高評価。でも、その称賛の裏には「近寄りがたい」という空気も漂っているのを、私は感じていました。
その日は2月13日。翌日のバレンタインデーを前に、大型化粧品ブランドのプレゼン資料と格闘していました。六本木の高層ビルの窓からは、東京の夜景が煌めいています。
「橘さん、明日のイベント会場の下見、まだですよね」若手の佐々木君が声をかけてきました。確かにその通りでした。会場となる銀座のバーの下見がまだ残っています。
寒風が吹きすさぶ銀座の街並みを歩きながら、私は地図を頼りに目的地を探していました。そして、レンガ造りのビルの地下に、小さな看板を見つけました。「Bar 琥珀」。
重厚な木製のドアを開けると、温かな琥珀色の灯りが私を包み込みました。カウンターの向こうで、一人の男性がグラスを磨いています。
「いらっしゃいませ」艶のある低い声で彼は私を迎えました。まっすぐに私を見つめる琥珀色の瞳。白いシャツに黒のベスト姿の彼の整った顔立ちが、柔らかな照明に浮かび上がります。
「初めまして。明日のイベントの件で伺いました。橘と申します」私は名刺を差し出しました。「バーテンダーの早瀬圭吾です」彼もまた丁寧に名刺を差し出してきました。
外の寒さで凍えた体が、店内の温もりで少しずつ溶けていくのを感じながら、私は彼と打ち合わせを始めました。その時はまだ知りませんでした。この出会いが、私の人生を大きく変えることになるとは。
「少しお時間よろしければ、明日提供予定のチョコレートとカクテルのペアリングをご確認いただけますか」圭吾さんの提案に、私は時計を確認しました。
まだ8時。この後もプレゼン資料の修正が待っていましたが、イベントの成功のためにも、内容の確認は必要でした。
クラシカルな革張りのカウンター席に腰掛けると、圭吾さんは静かに準備を始めました。その所作には無駄がなく、まるで舞うような優雅さがありました。
「こちらが tomorrow's promise です」彼が差し出したカクテルは、琥珀色に輝くブランデーベースの一品。グラスの縁には、薄く削られたチョコレートが飾られていました。
「このカクテルには、特別なビターチョコレートを合わせています」そう言って彼が置いたのは、艶やかな四角いチョコレート。カカオの香りが、ふわりと漂ってきます。
一口飲むと、ブランデーの芳醇な香りと、スパイスの効いた温かみのある味わいが広がりました。そして、チョコレートをそっと口に運ぶと...。
「!」思わず声が出そうになるのを、私は必死に抑えました。カカオの深い苦みと、かすかに感じる塩味。そして最後に訪れる、繊細な甘み。
「このチョコレート、素晴らしいです」素直な感想を伝えると、圭吾さんは少し照れたような表情を見せました。
「実は、このチョコレートは私の手作りなんです」その言葉に、私は驚きを隠せません。バーテンダーなのに、チョコレートも作るのですか?
「昔、パリで修行していた時に、ショコラティエの資格も取得したんです」そう語る彼の横顔が、琥珀色の照明に照らされて、妙に印象的でした。
その夜、プレゼン資料を仕上げながら、私の頭の中では琥珀色のカクテルと、ビターチョコレートの余韻が残り続けていました。
「橘さん、このデータ、確認をお願いします」深夜になっても、オフィスはまだ明るく、チームメンバーたちは黙々と作業を続けています。
資料に目を通しながら、私は不意に圭吾さんの言葉を思い出していました。「明日のイベントでは、お客様の心に残る特別な体験を提供したいんです」
そして迎えたバレンタインデー。朝から緊張感が漂う会議室で、私たちは最後の打ち合わせを行っていました。
(つづく)
全部を載せたいのですが、残念ながら文字の制限があるため、もし続きが気になる方は私のnoteをご覧ください。気に入っていただけたらハートマークをタップお願いします!