光がまぶしくて、目を細めざるを得ませんでした。目の前には見慣れた風景ではない、草原が広がっています。私の名前は山田あかり、普段は都内の女子大学に通う、ごく普通のオタク女子大生。いや、今はどうやら『エリュシオンファンタジア』の世界にいるようです。 まさか自分が異世界に召喚されるなんて、つい先ほどまでオンラインゲームのイベント中だったはずなのに。私の周りには見知らぬ植物や、奇妙な鳥が飛んでいます。手にしていたスマートフォンは跡形もなく消え、代わりに軽い革の鎧と、見たこともないような剣が装備されています。 ゲームの知識はあっても、リアルで戦闘の経験なんてゼロ。運動音痴の私が、伝説の勇者の末裔として魔王を倒すなんて、明らかにミスキャストも甚だしいでしょう。でも、今はそんなことを悠長に考えている場合ではありません。目の前に広がる異世界で、私はこれから何を、どうやって生き抜けばいいのでしょうか。 そう思い立った矢先、遠くから異様な鳴き声が聞こえてきました。振り返ると、鹿ほどの大きさの羽毛生き物が、まるで私を狙っているかのように近づいてきています。瞬間、ゲームの知識が脳裏をよぎります。これは多分、『エリュシオンファンタジア』でいう「フェザーウルフ」という雑魚モンスターですね。 いつもならゲーム画面上で簡単にハンマーで倒せるはずのモンスターが、目の前にリアルに迫ってくると、さすがに恐怖で足がすくみます。頭の中で必死に対処法を考えます。このモンスターの弱点は首の後ろ。でも、私には剣術の素養なんてありません。格闘技と言えば、キーボードを激しく叩くことくらいです。 突然、背後から軽やかな足音と共に、銀色の矢が放たれます。見事にフェザーウルフの首に命中し、モンスターは地面に崩れ落ちました。振り返ると、そこには緑の衣をまとったエルフの少女が立っています。彼女の目は鋭く、私を審査するかのような視線を向けています。 「珍妙な装備の人間だね。伝説の勇者の末裔らしいけど、戦う気はあるの？」 エルフの少女の言葉に、私は言葉に詰まります。これから私を待ち受ける冒険の始まりを、何となく予感しました。 エルフの少女の名は、レイラと言いました。鋭い目つきの中にも、どこか温かみのある表情を持つ彼女は、私に生存に必要な基本的なスキルを教えてくれることになりました。 「あなたが本当に勇者の末裔なら、最低限の戦闘スキルと生存技術は身につけないと」 彼女の言葉は厳しいけれど、教育的な愛情に満ちています。レイラは私に基本的な剣の構え方、モンスターの動きの読み方、そして何より重要な「逃げる技術」を伝授してくれました。オタク女子の私にとって、これは想像以上に難しいトレーニングでした。 興味深いことに、私の知識が異世界で予想外に役立つ瞬間が訪れます。例えば、野生のハーブの効能や調理法について、レイラは驚きの表情を浮かべていました。私の日本の料理知識と、彼女の植物に関する知識が見事に融合し、美味しくて栄養価の高い野外料理を作ることができたのです。 「あなた、本当に面白い人間ね」とレイラは笑いながら言いました。 私は、この異世界での冒険が、単なるゲームではなく、本当の意味での成長の旅になりそうだと感じ始めていました。 旅を続けるうちに、レイラと私の関係は徐々に変化していきました。最初は厳しい師匠と、頼りない生徒という関係だった私たちは、今では互いを信頼できる仲間になっていたのです。 ある日、森の中で一匹のドワーフと出会いました。グリム・ストーンハンマーという名の、腰の低い筋肉質な男性です。彼は最初、私たちに敵対的でした。しかし、私が持参した日本の味噌と醤油が、彼の食への好奇心を刺激したのです。 「これは何だ、この不思議な調味料は！」 グリムは私の調理した料理に夢中になり、瞬く間に味の虜となりました。彼の鉱山にある食材と、私の調理法が見事にマッチし、全く新しい料理が生まれたのです。異文化交流の素晴らしさを、まさに実感する瞬間でした。 魔王討伐への道のりは長く険しいものになりそうですが、今の私には心強い仲間がいます。レイラの鋭い戦闘技術、グリムの頑強な戦闘力、そして私の想像力と知識。私たちは、この異世界を変えていけるかもしれない、そんな予感がしています。 私は深呼吸をして、これからの冒険に心の準備をしました。オタク女子から勇者へ。私の変容はまだ始まったばかりなのです。 （つづく） 全部を載せたいのですが制限があるため、もし続きが気になる方は私のnoteをご覧ください。気に入っていただけたらハートマークをタップお願いします！