[ (1) のつづき ] 驚いた顔をした私に、ミラは頷いた。 「そこよ」彼女は団地の奥、誰も見ていない場所を指さした。「でも気をつけて。未来を見ることは、未来を変えることでもあるの」 警察が見ていない隙に、私はその場所に忍び込んだ。石畳の隙間から、小さな白い花が生えていた。血の跡の真ん中に🌸 不思議な感覚に導かれ、花を手に取った瞬間、再び世界が歪んだ。 今度見えたのは、古い倉庫。檻の中の子どもたち。そして母さんの若い頃の姿。母さんは泣いていた。そして男の声。「次はお前の番だ、月野」💔 現実に戻ると、私の目からは涙が流れていた。なぜだろう？何かを思い出したような、でも思い出せないような。 「やっぱり、あなたは特別ね」 ミラが後ろに立っていた。「その花は『時の花』。過去と未来を繋ぐもの」 「これが何か分かるの？」 「もちろん」彼女は静かに言った。「だって私が植えたのだから」 「なぜ？」 「あなたに見つけて欲しかったから。月野さんの娘だって知ったとき、確信したの。あなたなら真実を暴けると」 「母さんに何があったの？」 ミラは遠くを見た。「過去は変えられない。でも未来は変えられる。砂が落ちきる前に、真実を知れば」⏱️ 彼女が去った後、私は決意した。母さんの秘密、この街の謎、そして「時間を覗く者」の運命を解き明かすと。 白い花を胸ポケットに、砂時計を握りしめて、私は走り出した🏃‍♀️ ＊ 家に戻ると、母さんは店番をしていた。いつも通りの姿。でも今の私には、その顔に隠された影が見えた🕵️‍♀️ 「ユイ、どこ行ってたの？」母さんの声は普段より高い。緊張している。 「ちょっと散歩」と嘘をつく。三度目の嘘。大人になるってこういうことなのかな。 その夜、母さんが眠った後、私は彼女の引き出しを探った。悪いことだって分かってる。でも真実を知りたかった📝 奥から出てきたのは古い写真。若い母さんと見知らぬ男たち。そして背景に写っていたのは「蒼月倉庫」という看板。 そこだ。夢で見た倉庫。 翌朝、学校をさぼって、その倉庫を探した。北区の工業地帯。廃墟と化した建物は、まるで時間が止まったかのようだった⏰ 「来ると思ったわ」 振り返ると、ミラが立っていた。彼女の瞳は悲しみに満ちている。 「ここで何があったの？」 「二十年前、この街の子どもたちが次々と消えた時期があった」ミラの声は冷たい。「表向きは誘拐事件として処理されたけど、真実は違う」 ミラは倉庫の奥へと私を導いた。床に描かれた奇妙な模様。壁には謎の文字。そして錆びた鉄格子の檻👀 「彼らは『時間』を集めていた。子どもの純粋な『時間』を」 言葉の意味は分からなかったけど、この場所が何かを奪う場所だったことは感じた。冷たい。息苦しい。 「そして、あなたのお母さんは唯一の生存者」 心臓が止まりそうになった。 「でも代償があった。彼女の『時間』は半分奪われた。だから—」 「だから母さんは年より老けて見える」言葉が自然と出てきた。 砂時計を取り出す。砂は残りわずか。「これも関係あるの？」 「それは『時を司る者』の道具。彼らが使っていたもの」ミラの目が暗くなる。「あなたがそれを持っていることを、彼らは知っている」 「彼らって誰？」 答える前に、倉庫の扉が開く音。誰かが来た🚪 「隠れて！」ミラが私を押し込んだのは、壁の隙間。狭い空間から、私は男たちを見た。黒いスーツ。そして懐かしい顔。 「あの子はどこだ？」男の声に聞き覚えがある。「砂時計を持った子どもを見たという報告があった」 「分かりません」もう一人の男。「ですが、月野の娘の可能性が—」 「月野の娘か」男の口調が変わる。「あの実験の生き残りが子どもを…興味深い」 ミラが何かを落とした音。男たちが振り向く。 「逃げて！」ミラの叫び声。 私は暗闇の中を走った。頭の中で砂時計の音が鳴り響く。時間がない🏃‍♀️ 母さんを守らなきゃ。真実を知らなきゃ。 砂時計を握り締めると、不思議と力が湧いてきた。次に見た未来は、街の古い神社の地下室。そこにすべての答えがある。 「行くしかない」 私は決意した。たとえ9歳でも、自分の運命は自分で切り開く⚔️ [ (3) につづく]