「だから上はさぁ、現場の苦労なんて全くわかっちゃくれないんだってぇ」 　ぐだぐだと愚痴をこぼしながら、ちびちびと冷酒を喉に流し込んでいく。 　この仕事に就いて結構経ったが、こんな苦労する業種だとは思わなかったのだ。 　同僚もさっさといなくなっていくし、自分だって何度もやめようかと思った。 「聞ーへ……ひっく、聞いてんのかこらぁ」 「あ、はい、メェ……まじスンマせんした」 「だいたい今日の仕事だってねぇ、暴れ山羊だっていうから投網で捕獲しろとか言われて」 　きゅっと酒を喉へ流し込んで、隣の山羊頭を睨みつける。 「そんで捕まえたのがアンタよアンタ！　ふざけてんのか」 「や、暴れ山羊っていうか、その、自分は一応悪魔族で……バフォメットっていう……」 「口答えするんりゃ……へっく、ねーの！　そもそもアンタらが悪さしなきゃ――」 　――愚痴吐きとお説教をぐつぐつと煮込みつつ、おでん屋の夜は更けていくのだった。