窓の外には、夏の青空が広がっていた。白い雲がゆっくりと流れ、遠くに見える山々は薄い緑に染まっている。私は、その風景に目を奪われながら、手に持つ小さな扇風機のスイッチを入れた。涼しい風が頬に触れるたびに、心の中のもやが少しずつ晴れていくような気がした。 この部屋にこもり、日々の喧騒から逃げるように過ごしてきた。心の奥底にしまいこんだ想いは、まるでこの夏の日差しのように、私の中でゆっくりと熱を帯びていく。しかし、それをどう表現すればいいのか、私にはまだわからない。思いを伝えることの難しさ、それが怖くて、私はずっと言葉を飲み込んできた。 彼と出会ったあの日から、私の世界は少しずつ変わり始めた。初めて感じたこの胸の高鳴りは、何か新しいものを予感させるけれど、同時にそれが何かを失うことへの不安も呼び起こす。私たちはただの友人として過ごしてきたけれど、その間にも確かに何かが育まれていた。 彼の言葉、彼の笑顔、そして時折見せる真剣な表情――すべてが私の心に深く刻み込まれている。けれど、彼にそのことを伝える勇気が、まだ私にはない。私はただ、この夏の終わりが来る前に、何かを変えたいと思っている。でも、どうすればいいのだろう？ 扇風機の風に髪が揺れる。その風景に重ね合わせるように、私は彼との思い出を振り返る。心の中で何度も描いたシナリオを思い出すが、現実はいつも私の想像とは少し違う。私はこのまま、ただの日常に戻るのか、それとも一歩を踏み出すのか――答えはまだ出ていない。 窓の外には、変わらない青空が広がっている。私の心もまた、この空のように広がり、そして揺れ動いている。この夏が終わる前に、私の心の中で何かが決まるのだろうか。それとも、ただこの風景と共に、私の想いも流れていくのだろうか。