澄み切った空気、鳥のさえずり、そして木々の緑。それはまるで、日常から完全に切り離された別世界だった。 山ガールとして知られる里穂は、いつも通りのアウトドアファッションに身を包み、満面の笑みを浮かべていた。しかし、その笑顔の裏には、どこか満たされない気持ちがあった。 「もっと、解放されたい。」 そう思った彼女は、いつもより奥深い山道を進むことにした。人の気配は全くなく、ただ自分と自然だけ。 静寂の中、里穂はリュックから取り出した鏡を見て、自分の姿を確認した。日焼けした肌、乱れた髪、そして少し汗ばんだTシャツ。都会で着慣れたおしゃれな服とは程遠い、飾らない自分。 ふっと、そんな自分を意識した時、里穂の心の中に何かが生まれ始めた。 「なんで、いつもこうしなきゃいけないんだろう？」 都会では、人からどう見られるか、いつも気にしながら生きていた。おしゃれな服を着て、流行の言葉を使って、SNSに映える写真を撮って。でも、そんな自分、本当に好き？ そう自問自答しながら、里穂は登山服を脱ぎ始めた。ブラトップとショートパンツだけになった彼女は、深呼吸をして、太陽の光を浴びた。 木漏れ日が、彼女の肌を温かく照らす。鳥のさえずりが、彼女の心を解き放つ。 「気持ちいい…」 里穂は、今まで感じたことのない開放感を味わった。 都会では決してできないこと。誰の目も気にせず、ただ自然の中で自分らしくいること。 里穂は、地面に寝転がり、空を見上げた。白い雲がゆっくりと流れていく。 「私は私で良いんだ。」 そう心の中で呟いた時、里穂は、本当の自分を取り戻したような気がした。 山を下りる頃には、里穂の心は晴れやかだった。都会に戻っても、この山の記憶を忘れずにいたい。そして、これからも、何度でも山に足を運び、本当の自分と向き合いたい。 里穂は、そう心に誓いながら、新たな一歩を踏み出した。