――ねえ、知ってる？「青いバラの騎士」って名前を。 そう、私のことよ。夜な夜な街を駆け巡り、貧しい人たちに富を分け与える、ちょっとした都市伝説みたいな存在。実際のところ、私はただの貴族令嬢。優雅にお茶会を楽しみながら、来週の舞踏会でどのドレスを着るかなんて悩んでいるフリをするのが日常。でもね、退屈な日々の裏には秘密があるの。 私はリナ＝ヴァルデローザ、ヴァルデローザ家の三女で、家柄の期待を一身に背負う“完璧な淑女”を演じている。でも実際の私は、昼間の優雅な仮面を脱ぎ捨てると青いドレスをまとい、街中を駆け巡る「青いバラの騎士」なのだ。どうしてこんなことを始めたかって？それは長くなる話だけど……まあ、きっかけはつまらない偶然だったの。 街の貧民街で見たあの子供たちの瞳、希望の欠片さえ見えない暗闇。その光景に心を動かされた私は、父の金庫からこっそり数枚の金貨を拝借して、何気なく置き去りにした。それが最初の一歩。 さて、今夜も私は青いドレスを身にまとい、髪を手早くまとめ直す。青い髪の色はどうしても目立つけど、それが私のシンボルになるなら隠す必要はない。窓辺に腰掛け、月明かりを背にして外を見下ろす。冷たい風が肌を撫でる感覚が心地よい。 私の活動拠点はヴァルデローザ家の地下通路。貴族たちが戦乱を避けるために作ったと言われる秘密の道が、今や私の舞台裏だ。そこから街中の路地裏へと繋がる小さな扉をくぐる。 街の貧民街はいつものように静まり返っている。月明かりが薄暗い路地を照らし、影と光が複雑に交錯する。その中を走る私の足音だけが響く。 「よぉ、お嬢さん、こんな夜更けにどこへ？」 突然聞こえた声に立ち止まる。振り返ると、黒いマントを羽織った青年が立っていた。顔の半分がマスクに隠され、声はどこか挑発的だ。 「その格好、もしかして……噂の『青いバラの騎士』ってやつか？」 ――誰？一体どうして私のことを知っているの？ 「黙ってるってことは図星か。まあ、逃げるつもりならやめとけ。こっちはこう見えて足が速いんだ」 困った。この手のタイプは直感で分かる。追い払うのも、無視するのも難しい。私は小さく息をつき、青いドレスの裾を整えながら言い返した。 「そういうあなたこそ、こんな時間に怪しい格好でうろついて、何者なのかしら？」 彼は片眉を上げ、にやりと笑った。その笑みは妙に挑発的で、どこか意図を隠しているようだった。 「俺のことを知りたいか？それなら取引だ。俺もあんたに興味があるからな。少なくとも、その正義とやらが本物かどうか試してみたくてね」 この出会いが、私の運命を大きく変えることになるなんて、この時はまだ知らなかった――。 月明かりの下、青いドレスと黒いマントが並ぶ影が、静かな路地に新たな物語の序章を描いていた。 *** 「取引って何のことかしら？」 私は彼の言葉に戸惑いながらも、冷静を装って問い返した。だが、その裏で脳内はフル回転している。この男は一体何者なのか？どうして私が「青いバラの騎士」だと知っているのか？ 「まあまあ、そんな怖い顔すんなよ。俺はただ、あんたのやり方に興味があるだけだ」 青年は軽い調子で手を広げてみせた。 「興味？」 「そうだ。たとえば――その金を配るって行為、本当に世の中を変えられると思うか？」 その言葉に、心の奥底がざわめいた。彼の声は軽妙で、どこか楽しげですらあったが、その目は真剣そのものだった。 「それは……！」 答えに詰まる私を見て、彼はさらに口元を歪めて笑った。 「答えられないか。なら、こうしよう。あんたがその“正義”を証明できるかどうか、俺が見届けてやる。ただし――俺の条件付きでな」 「条件？」 「俺が指定する貴族の邸宅に忍び込んでみろ。その家にはとびきりヤバい秘密が隠されてる。あんたが本当に正義を振りかざすつもりなら、その真実を暴けるはずだ」 妙な話だった。だが、ここで退くわけにはいかない。彼の言葉がどこか挑発的である以上、その挑戦を受ける以外の選択肢はないように思えた。 「いいわ。その条件、受けてあげる」 自分の声が思ったよりも堂々としていて、少しだけ安心した。 （つづく） 全部を載せたいのですが、残念ながらこちらのキャプション欄には文字の制限があるため、もし続きが気になる方は私のブログ「MochiMermaid’s AI Art Adventures」やnoteをご覧ください。気に入っていただけたらハートマークをタップお願いします！