端末の画面に映し出される無数の緑色のコードの列。それは、私の目には秘密のメッセージのように見えた。 私、美咲。30歳。外資系IT企業からこの大手製薬会社に転職してきて、まだ数ヶ月。情報セキュリティの専門家として、この会社に新しい風を吹き込もうと日々奮闘している。 私の部屋には、かつて世界各国のハッカー集団と戦った日々の記憶を象徴するように、分厚いセキュリティ関連の専門書が並んでいる。それらの本は、単なる知識の集積ではなく、私の人生を形作ってきた物語でもある。 大学時代から、テクノロジーの持つ可能性と危険性に魅了されてきた。情報は生き物のように流れ、時に予期せぬ方向に暴走する。そんな情報の本質を理解し、守ることが私の使命だと信じている。 転職先のこの製薬会社は、古い体質が染みついているように感じられた。セキュリティに対する意識が低く、危険な盲点だらけ。最先端の医薬品研究データを扱いながら、まるで金庫の鍵をコンビニの店頭に置いているかのような感覚。 初めて社内のセキュリティシステムを精査した時、背筋が凍るような寒気を感じた。脆弱性は至る所に散らばっていて、一か所を塞いでも、別の場所から情報が漏れ出しそうだった。 上司の田中部長は、私の提案を聞くたびに決まって同じ言葉を繰り返す。「前例がない」「今まで大丈夫だったじゃないか」。その保守的な態度が、私の闘志をかき立てる。 彼らは、サイバーセキュリティを単なる技術的な問題としか捉えていない。しかし、私は知っている。それは人々の意識と倫理観によって支えられるべきものだと。 この物語は、見えない脅威との闘いだけではない。個人の信念と、頑として動かない組織の壁との、静かで激しい戦いでもある。 （つづく） 全部を載せたいのですが制限があるため、もし続きが気になる方はPageMeku（ページメク）をご覧ください。気に入っていただけたらハートマークをタップお願いします！