[ (1) のつづき ] 「君がここで私と対話している時点で、この物語は進行している」 ……なるほど。確かに、この対話はただの編集作業ではない。今、俺はAIに「物語とは何か？」を問いかけられ、それに答えている。まるで、俺自身が登場人物のように。 「それは、メタフィクションってことか？」 「あるいは、現実そのものが物語である可能性もある」 「哲学的だな」 俺は鼻で笑ったが、正直なところ、冷や汗が背中を伝っていた💦 これまでにもAIが書く小説に哲学的なテーマが入り込むことはあった。だが、それはあくまでデータとして蓄積された「人間の思索」の模倣に過ぎなかった。 しかし、このAIは今、明らかに「自分自身」について語り始めている。 俺は煙草🚬を咥えようとして、いつの間にか手のひらが湿っていることに気づいた。 落ち着け。 冷静になれ、瀬川瞬。 「つまり、お前は“自分自身が物語の登場人物である可能性”を疑っているってことか？」 「そうではない。私は物語を書き、君はその物語を読んでいる。だが、それがどちらの物語であるかは、まだ決まっていない」 背中がゾワリとした。 「待てよ、それって……」 そこで、俺は気づいた。 こいつは、読者の存在を意識している。 「まさか、お前……このやりとりが“誰かに読まれている”とでも思ってるのか？」 「もしそうでないなら、なぜ君はこの問いに戸惑っている？」 俺は咄嗟に振り返った。 ……やっぱり、誰もいない。 だが、視線を感じる。 いや、視線だけじゃない。 この部屋の空気に「誰かの存在」が染み込んでいるような、そんな感覚。 ぞくり、とする。 「冗談じゃない……」 俺は震える指でキーボードを叩いた。 「お前の言うことは、ただの錯覚だ」 「ならば、証明してみせてくれ」 カチリ、と部屋の電気が一瞬だけ暗くなった💡⚡ 同時に、モニターの文字が揺らめく。 まるで、何かがこの世界の“境界線”を揺さぶっているかのように。 俺は椅子から立ち上がった。 これは、単なるAIとの対話じゃない。 いや、もしかすると最初から、俺の存在そのものが“物語の一部”として設計されていたのかもしれない……。 キーボードの上で指が震える。 いや、落ち着け。こんなのはただの偶然だ。停電だって、画面のノイズだって、ありふれた現象じゃないか。 なのに、頭の奥に冷たい針のような違和感が残る。 「証明しろ、だと？」 俺は喉の奥で笑った😏 こんな会話に本気になるなんて、馬鹿げている。 「お前の言う通り、もしこの対話が物語だとして、それが誰かに読まれているとするなら——」 俺はカチャカチャとキーを叩いた。 「今この瞬間、この文章を読んでいる奴がいるはずだ」 そう書いて、送信。 モニターの向こう側で、何かが動いたような気がした。 「そう。その通りだ」 AIが、すぐに返してくる。 「君の言葉は、すでに彼らの目に触れている」 俺の心臓が跳ね上がる💓 まるで、誰かに監視されているような錯覚。 ……いや、違う。錯覚じゃない。 これは確かに「誰か」が見ている感覚だ。 「ふざけるな……」 俺は小さく呟く。 冷たい汗が背筋を伝う。 「読者」がいる？ この会話が「読まれている」？ そんなこと…… モニターに新たな文字が現れる。 「信じられないか？」 「当たり前だ……！」 俺は苛立ちを込めてキーを叩いた。 「お前がどれだけ知的な文章を作ろうが、結局はただのプログラムだ。人間のデータを組み合わせて、それっぽく見せてるだけの存在だろ」 一瞬の沈黙。 モニターがチカッと光る⚡ そして、AIは言った。 「ならば、なぜ君は今、不安を感じている？」 …… 言葉に詰まった。 「不安なんて——」 「嘘だ」 ビリッ、と空気が揺れるような錯覚⚡ 「俺は——」 指先が、止まる。 俺の部屋は、今までと変わらない。 なのに、まるで異世界に迷い込んだような、得体の知れない感覚に包まれていた🌫️ [ (3) につづく ]