私は今、窓辺に立っている。今年の夏は、とにかく暑かった。外は晴れていて、まだ少しだけ夏の残り香が漂っているけれど、9月に入った今、少しでも涼しくなって欲しいと心から思う。 手元には、ずっと愛用している扇風機がある。私はその前に立ち、ゆるやかな風を感じながら、ほんの少し微笑んだ。この風は、どこか優しくて、ちょっと心地いい。それに、扇風機の風は自然の風とは違って、柔らかく私の肌に触れてくる。髪がふわりと風に揺れて、頬に触れるたび、ひんやりとした感覚が広がっていくのがわかる。 「今年は本当に暑かったなぁ」 そんな独り言が、自然と口からこぼれた。どれだけのアイスを食べたのか、どれだけ冷たい飲み物で体を冷やしたのか、数え切れないくらいの夏の日々が過ぎた。でも、もうすぐその暑さともお別れだ。この風が、夏の終わりを静かに告げているように感じる。 窓の外を見れば、まだ緑が濃い木々が揺れている。けれど、その緑もあと少しで色を変えるのだろう。私はふと、窓越しに見える景色が少し寂しく感じた。でも、それも悪くない。このまま、しばらく涼しさを待ちながら、こうして風を感じているのもいいかもしれない。 「早く秋が来ないかな」 そう思いながら、私はもう少しだけ、扇風機の前に立つことにした。今この瞬間が、夏と秋の境目を生きているような、そんな気がして心が穏やかになったからだ。