春の息吹が、冬の寒さを溶かし始める、そんな穏やかな季節の始まり。 私はタマ。 ごく普通の女子高生だ。  最近、ちょっと気になることがある。 それは、お腹周りについた浮き輪のようなお肉たち……。 いや、決して太っているわけじゃない。 ただ、もう少しだけ、キュッと引き締まったウエストを手に入れたいだけなんだ。 そんなわけで、春休み明けからダイエットを始めることにした。 友達と一緒にランニングしたり、健康的な食事を心がけたり。 最初は順調だった。 体が軽くなっていくのが、実感できた。 でも……、 やっぱり、誘惑には勝てない時もあるんだよね。 特に、甘いもの。 目の前に美味しそうなケーキが現れた時なんかは、もう大変。 先日、友達の誕生日パーティーに招待された。 会場に入ると、目に飛び込んできたのは、夢のような光景。 テーブルの上に所狭しと並べられた、色とりどりのケーキたち。 チョコレートケーキ、ショートケーキ、チーズケーキ……。 どれもこれも、宝石のように輝いて見える。 特に、ひときわ目を引いたのは、チョコレートケーキだった。 深い褐色の生地に、つやつやのチョコレートソースがたっぷり。 その上には、真っ白な生クリームと、真っ赤なイチゴがちょこんと乗せられている。 まるで、私を誘っているかのようだ。 「美味しそう……」 思わず、心の声が漏れてしまう。 その時、私の心の中に、二人の住人が現れた。 一人は、天使。 「タマちゃん、我慢して！ 目標を達成するためには、誘惑に打ち勝たなくちゃ！」 もう一人は、悪魔。 「大丈夫、大丈夫。一口くらいなら、バレないよ。 それに、今日は特別な日なんだから、楽しまなくちゃ！」 二人の声が、頭の中で交互に響く。 私は、どうしたらいいんだろう……。 葛藤は続く。 ケーキを食べるべきか、それとも我慢するべきか。 天使と悪魔の戦いは、まだ始まったばかりだ。 私のダイエットは、果たして成功するのだろうか？ それとも、甘い誘惑に負けてしまうのだろうか？ *** チョコレートケーキの誘惑に、私は完全に釘付けになっていた。 まるで、魔法にかけられたみたいに、ケーキから目が離せない。 「食べたい……」 心の奥底から、切実な叫びが聞こえてくる。 でも、天使が囁く。 「タマちゃん、ダメだよ！ ここで食べたら、今までの努力が水の泡になっちゃう。 目標を達成するためには、我慢しなくちゃ！」 確かに、天使の言う通りだ。 ここまで頑張ってきたのに、ここで諦めるわけにはいかない。 でも、悪魔も囁く。 「タマちゃん、そんなに我慢しなくても大丈夫だよ。 今日は特別な日なんだから、ちょっとくらい自分を甘やかしてもいいんじゃない？ それに、一口だけなら、きっと大丈夫だよ。」 悪魔の言葉は、甘くて優しい。 まるで、私を包み込んでくれるみたい。 「一口だけなら……」 そんな風に考えてしまう私は、やっぱり甘いのかな。 でも、本当に一口だけなら、大丈夫かもしれない。 そう思うと、ケーキへの欲求がどんどん膨らんでいく。 「やっぱり、食べたい！」 私は、ついに決心した。 ケーキを食べることにする。 でも、ただ食べるんじゃなくて、ちゃんと味わって食べる。 一口ずつ、ゆっくりと。 そうすれば、きっと満足できるはず。 私は、チョコレートケーキの前に立った。 フォークを手に取り、ケーキにそっと差し込む。 チョコレートの甘い香りが、鼻をくすぐる。 「いただきます」 私は、小さな声で呟いた。 そして、ケーキを口に入れた。 チョコレートの濃厚な味わいが、口いっぱいに広がる。 「美味しい……」 私は、至福の表情を浮かべた。 やっぱり、ケーキは最高だ。 でも、同時に、罪悪感も感じていた。 「本当に、一口だけなら大丈夫かな？」 そんな不安が、頭をよぎる。 私は、ケーキをゆっくりと味わいながら、心の中で葛藤していた。 天使と悪魔の戦いは、まだまだ続く。 私のダイエットも、まだまだ続く。 果たして、私はこの誘惑に打ち勝つことができるのだろうか？ それとも、甘い誘惑に負けてしまうのだろうか？ 【(2)につづく】