夜空を見上げると、私はいつも思う。 運命とは、本当に星々が定めたものなのか？ それとも私たちが決めるものなのか？ ──私は、射手座王国の王女エレナ。幼い頃から、私の未来はすでに決まっていた。獅子座王国の第一王子と結婚し、国と国との平和を築く。そのために学び、育ち、準備をしてきた。 けれど、運命は時に、悪戯に私たちを試すようだ。 その日、私は本来送られるはずだった獅子座王国ではなく、双子座王国へと誤って届けられた。 「エレナ王女……でしたね？」 微笑を浮かべながらも、その目には何か冷たいものを感じさせる男──双子座王国の王子アルゴが、私を迎えた。 彼は二つの顔を持つと噂されている。片方は穏やかで優しい青年、もう片方は冷酷非道な策略家。 「どうやら、面白いことになったようですね」 そう言った彼の口元がわずかに歪んだ瞬間、私は悟った。 これは単なる手違いではない。 これは、運命を超えた私の物語の幕開けなのだ、と。 「どうやら、面白いことになったようですね」😏 アルゴ王子の声は、まるで戯れのように軽やかだった。しかし、その眼差しは底の見えない湖のように深く、私の心を鋭く射抜いた。 間違いだったのか？ それとも、これは仕組まれたものなのか？ 私の身体を包む旅装は、まだ砂漠の風の名残を帯びていた。射手座王国を出発してから三日──本来ならば、私は獅子座王国の黄金の宮殿で迎えられていたはずだった。豪奢な宴、王子の手、そして約束された未来……🌠 だが、今ここにいるのは、双子座王国の白と黒が織りなす宮殿の中。そして目の前には、伝説の「二つの顔」を持つ王子アルゴ。 「……手違いです。私はここに来るべきではありません」 私の声は、思ったよりも冷静だった。だが、その内側では、私の心臓が乱れ打つ鼓動を刻んでいた💓 「ふむ……たしかに、そうでしょうね」 アルゴ王子は、ゆるりと歩み寄ると、私の顎に指を添えた。 「だが、面白いじゃないですか？」 その瞬間、背筋に冷たいものが走った⚡ 彼の手は柔らかく、しかし、その仕草には鋭利な刃のような圧があった。彼は私を試している──私がどんな人間なのか、どれほどの価値があるのかを。 「……何が面白いのです？」 私はまっすぐに彼を見つめた。 双子座王国の人々は、言葉遊びと策略を好むと言われている。彼らは表の意味と裏の意味を同時に操り、何が本心かを見抜くのは至難の業。 そして、この王子は、その典型なのだろう。 「あなたは、射手座の王女ですね。狙った獲物を逃さぬ、真っ直ぐな弓の使い手🏹」 「……」 「そして私は双子座の王子。二つの顔を持つ、気まぐれな影🐍」 アルゴは片手を広げ、誇るように笑った。 「さて、ここで問題です。あなたは間違えてここに送られた──ならば、私はあなたを帰すべきなのか？」 彼の声は冗談めいていたが、その瞳の奥には、私がまだ見たことのない深い闇が渦巻いていた🌑 私はこの国の習慣を知らないわけではない。 「もしここで答えを誤れば──私は、ただの駒として扱われる」 思考が駆け巡る🌀 ここで泣き叫び、国へ帰してほしいと願えば、私は弱いと見なされる。逆に、強がりすぎれば、彼の興味を引き、別の意味で利用される可能性もある。 つまり── 「……ならば、あなたはどうしたいのです？」 私は逆に問い返した。 アルゴ王子の唇が、僅かに驚いたように歪んだ。 「おや……？」 「私は、ここに来たかったわけではありません。でも、あなたが何を望むのか……それを知ることには、少し興味があります」 私は微笑んだ。挑発ではなく、ただ、彼を知るための糸口として🕊️ アルゴ王子は少しの間、沈黙した後、やがて愉快そうに笑った。 「いいですね……やはり、あなたはただの政略結婚の駒ではない」 彼は私の手を取り、ひざまずくと、僅かに唇を寄せる。 「ようこそ、エレナ王女。貴女がここで何を見つけるのか、私も楽しみにしていますよ」 彼の声は、まるで星空の下で囁く風のようだった✨ その瞬間、私は悟った。 アルゴ王子の唇が、私の手の甲にふれる直前── 私は、そっと手を引いた✋💨 「歓迎の意は受け取ります。でも、私の意思は私のものですから」 彼の瞳が一瞬だけ鋭く光ったが、すぐにまた、柔らかな微笑みへと変わった😏 「なるほど……獅子座の王子に捧げるはずの手を、私には許さないと？」 彼は立ち上がると、私の隣をゆっくりと歩くようにして、視線を絡める。 「その誇り高い態度、まさに射手座の王女ですね🏹🔥」 私は沈黙したまま、周囲を観察した。 [ (2) につづく ]