私の名前はミツキ。17歳の高校2年生です。 この不思議な物語は、ある秋の放課後に始まりました。 夕暮れの空が茜色に染まり始めた頃、いつもの帰り道で見慣れない光景に出会ったのです。古びた児童公園の砂場に、神秘的な模様が浮かび上がっていました。 まるで誰かが砂の上に虹色のペンで描いたような、完璧な円環。その中心には、さらに小さな円が幾重にも重なり、まるで万華鏡のような模様を形作っていました。 私は思わず立ち止まり、その不思議な模様を見つめました。放課後の部活も終わり、疲れた体を引きずって帰るところだったのに、なぜかその光景に心を奪われたのです。 「これって、誰かのアート作品なのかな？」 独り言を呟きながら、私は砂場に近づきました。夕陽に照らされた円環は、まるで生きているかのように、かすかに脈動しているように見えました。 実を言うと、私はこの時期、心に重たい影を抱えていました。クラスメイトとの距離感、成績の低下、そして母との関係。どれも解決できないまま、ただ時間だけが過ぎていくような日々を送っていたのです。 「もしかして...」 なぜか私は、その円環の中心に立ってみたくなりました。普段の私なら、こんな突飛な行動は決して取らないはずです。でも、その時の私は、まるで誰かに背中を押されているような感覚がありました。 円環の中心に足を踏み入れた瞬間、世界が歪み始めました。まるで万華鏡の中に吸い込まれていくような感覚。私の体が、意識が、どこか別の場所へと引き寄せられていく...。 「きゃっ！」 目が眩むような光の渦に包まれ、私は意識を失いました。 目を開けた時、そこは私の知る世界とは全く違う場所でした。足元には透明な床が広がり、その下には雲海が果てしなく続いています。空には、まるで水彩絵の具を垂らしたような、鮮やかな色彩が溶け合っていました。 そして、その幻想的な空間の中に、一人の少女が立っていたのです。 「よく来てくれました、ミツキさん」 青と黒のグラデーションの髪を持つ少女は、まるで私の到着を待っていたかのように微笑みかけました。その瞳は、万華鏡のように七色に輝いています。 「あなたは...誰？それに、ここは...？」 私の問いかけに、少女は静かに答えました。 「私は輪の守護者。そして、ここは感情が色となって形を成す世界なのです」 その言葉と共に、私たちの周りに無数の円環が浮かび上がり始めました。それぞれが異なる色彩を放ち、まるでオーロラのように空間を彩っています。 でも、その美しい光景の中に、私は違和感を覚えました。いくつかの円環が、まるでガラスが割れたように亀裂を入れていたのです。 「この世界は、今まさに崩壊の危機に瀕しているのです」 輪の守護者は悲しげな表情で、壊れかけた円環を見つめました。 「人々が心を閉ざし、感情を押し殺すようになってしまった。そのために、輪が次々と壊れていくのです」 私には、その言葉が痛いほど理解できました。自分自身、周りとの関係に傷つき、心を閉ざしてきた日々。感情を表に出すことを恐れ、ただ無難に過ごすことだけを考えていた時間。 「でも、どうして私がここに？」 「あなたの中には、まだ純粋な色が残っているから」 守護者は私の胸元を指さしました。そこには、かすかに虹色の光が灯っています。 「他人の気持ちに共感する力、優しさ、そして何より...変わりたいという願い」 私は思わず自分の胸に手を当てました。確かに、この光は温かい。今まで気付かなかった、でも確かにそこにあった何か大切なものを感じます。 「ミツキさん、私たちと一緒に輪を修復してください。あなたの持つ色で、この世界を救うことができるはずです」 守護者の言葉に、私は戸惑いを覚えました。だって、人の心を救うなんて、私にできるはずがない。自分の心さえ、まともに向き合えていないというのに。 その時、遠くからか近くからか、様々な声が聞こえてきました。 「誰かわかってほしい」 「この気持ち、どこにもぶつけられない」 「独りは、もう嫌だ」 それは、壊れかけた輪の中に閉じ込められた、人々の心の声。私と同じように、孤独や不安を抱えた人たちの想いでした。 「私...試してみたいと思います」 自分でも驚くほど、迷いのない声が出ました。 守護者は優しく微笑むと、手を差し出しました。 「最初の輪へと案内しましょう」 私たちの周りの空間が、まるで万華鏡のように回転し始めます。そして新しい景色が広がり...。 （つづく） 全部を載せたいのですが、残念ながら文字の制限があるため、もし続きが気になる方は私のnoteをご覧ください。気に入っていただけたらハートマークをタップお願いします！