私の名前はリラ。この小さな緑の惑星で暮らす、ごく普通の14歳。でも、あの夜に見つけた古代の天文台が、私の人生を永遠に変えることになるなんて、その時は想像もしていませんでした。 私の住む星は、宇宙暦3157年の銀河地図では「エコー・ガーデン」と呼ばれています。丘陵地帯に囲まれた小さな集落で、祖母と二人で暮らしています。周りには果樹園が広がり、色とりどりの花々が咲き乱れる美しい星です。 でも、この星には何か寂しいところがありました。夜になると、まるで誰かを待っているかのように、星全体が切ない響きを放つのです。私はよく、裏庭の古い木の下で、その音を聴きながら物思いにふけっていました。 祖母のメロディは、私が赤ちゃんの頃に両親を事故で亡くしてから、一人で私を育ててくれました。彼女は昔、星間交響楽団で演奏していた音楽家で、今でも美しいハープの演奏を聴かせてくれます。 「リラ、あなたの名前は音楽から来ているのよ」と祖母はよく言います。「古代では、リラは星々の調和を司る楽器だったの」そう話す祖母の目は、いつも遠い記憶を追いかけているようでした。 あの夜、満月の光が庭を銀色に染めていました。突然、空から降り注いだ青い光の粒子が、まるで私を導くように、裏山への小道を照らし始めたのです。 私は吸い込まれるように、その光を追いかけました。木々の間を縫うように進んでいくと、見たこともない古代の建造物が姿を現しました。それは、クリスタルとシルバーメタルで作られた巨大な天文台でした。 扉には見慣れない文字が刻まれていましたが、不思議なことに、私には読めました。「星の歌の記録所」。心臓が高鳴る中、私は重い扉を押し開けました。 中には巨大な望遠鏡があり、その周りには無数のクリスタルが浮遊していました。それぞれのクリスタルは、かすかに異なる色で輝き、微かな音色を奏でています。この場所は、まるで宇宙の音楽図書館のようでした。 私は恐る恐る望遠鏡を覗き込みました。すると、そこには信じられない光景が広がっていたのです。宇宙のあらゆる星が、それぞれ固有の歌を奏でているのが見えました。見えるだけではなく、聴こえたのです。 赤い巨星は荘厳なバスの響きを、若い青い星はクリアなソプラノを、中性子星は激しいパーカッションを奏でていました。それは壮大な宇宙交響曲でした。私は圧倒されながらも、深い懐かしさを覚えました。 望遠鏡の横には、特別な形をしたクリスタルがありました。手に取ると、それは温かく、まるで生きているかのように脈動していました。クリスタルは私の手の中で輝き、星々の歌を増幅し始めたのです。 その瞬間、私の中で何かが目覚めました。遠い記憶、そう、私は星の歌を理解できる「調律者」の血を引いていたのです。古代では、調律者たちは星々の調和を保つ重要な役割を担っていました。 クリスタルは私の感情に反応し、星々の歌を私たちの惑星全体に響かせ始めました。すると、エコー・ガーデンが応えるように、独自の歌声を取り戻し始めたのです。それは穏やかで、優しい子守唄のような旋律でした。 宇宙の様々な場所から、光の筋が私たちの星に向かって集まり始めました。それは他の星々からの応答、共鳴の証でした。私たちの星は、ついに宇宙の大きな交響曲の中で、自分の声を取り戻したのです。 天文台から家に戻ると、祖母が待っていました。彼女は穏やかな笑顔で私を見つめ、「ついに見つけたのね」とだけ言いました。その夜、私は星々の歌に包まれながら、穏やかな眠りについたのです。 これは私の新しい始まりでした。調律者としての使命に目覚めた私は、これから多くの冒険が待っているのを感じていました。でも不思議と怖くはありませんでした。だって、宇宙全体が私の味方なのですから。 その後の数日間、私は放課後になると天文台に通い詰めるようになりました。クリスタルの使い方を学び、星々の声をより深く理解しようと努めました。天文台の古代の記録は、驚くほど豊富な知識の宝庫でした。 「調律者の少女」という噂は、すぐに集落中に広まりました。最初は戸惑う人々もいましたが、夜空から降り注ぐ美しい星の歌を聴くうちに、皆が受け入れてくれるようになりました。特に子供たちは、毎日のように天文台に遊びに来るようになりました。 ある日、集落の広場で小さなコンサートを開くことになりました。祖母のハープと、私が増幅する星の歌が織りなすハーモニーは、思いがけない感動を呼び起こしました。老人たちの目には涙が光り、「昔の星の声を思い出す」と言ってくれました。 （つづく） 全部を載せたいのですが制限があるため、もし続きが気になる方は私のnoteをご覧ください。気に入っていただけたらハートマークをタップお願いします！