雲が低く垂れ込める灰色の空の下、10歳のユキは退屈な日々を過ごしていた。彼女の町は高い塀に囲まれ、誰も外の世界を知らなかった。 ある日、塀の向こうから不思議な歌声が聞こえてきた。ユキは好奇心に駆られ、塀の隙間から覗き込んだ。そこには信じられない光景が広がっていた。巨大な青い鯨が、まるで海を泳ぐように空を悠々と飛んでいたのだ。 鯨はユキに気づくと、ゆっくりと近づいてきた。恐れを忘れたユキは、鯨の背中に飛び乗った。すると鯨は空高く舞い上がり、雲を突き抜けていった。 ユキの目の前に広がったのは、想像もしなかった色彩豊かな世界だった。緑の草原、青い海、赤や黄色の花々。ユキは歓声を上げ、鯨の背中で踊り出した。 二人は遠くの国々を巡り、様々な文化や人々と出会った。ユキは世界の広さと多様性に心を奪われた。 夕暮れ時、鯨はユキを元の場所に連れ戻した。別れ際、鯨は優しくユキを見つめ、また会おうと約束した。 その日以来、ユキは町の人々に外の世界の素晴らしさを語り聞かせた。彼女の話に感化された人々は、少しずつ塀を取り壊し始めた。そして、みんなで空を見上げ、いつか訪れる鯨を待ち望むようになったのだった。