月明かりが、血染めの戦場跡を照らしていた。かつて華々しい合戦場であったであろうその地は、今は荒れ果て、静寂に包まれていた。その中にたたずむのは、一人の武士。錆びついた鎧を身に纏い、深々と刻まれた傷跡が彼の怨念を物語っている。血に染まった刀は、未だにその主人の無念を宿しているかのようだった。 彼は、かつてこの戦場で命を落とした勇敢な武士であったという。勝利目前、裏切りに遭い、無残にも討ち取られたのだ。未練を断ち切れぬまま、彼はこの戦場に縛り付けられ、成仏できずにいる。 夜な夜な、彼はこの戦場を彷徨い、血に飢えた目で生者を狩るという。その姿を見た者は、恐怖のあまり気を失ったり、あるいは命を落としたりしたと言われている。彼の怨念は深く、生者への憎しみは増幅の一途を辿っていた。 時折、遠雷のような声が響き渡る。それは、彼の無念の叫びなのだろうか。それとも、この戦場に永遠にこだまする悲痛な鎮魂歌なのだろうか。