空を見上げると、いつも不思議な気持ちになります。無数の雲が流れ、青く透き通る空が広がるその先に、何かがあるんじゃないかって思うんです。名前は「アヤ」。水色の髪が私の一番の特徴で、友達からはよく「空色のアヤ」なんてからかわれます。今日はお気に入りの薄いブルーのワンピースを着て、ひとり、空の広がる不思議な場所へやってきました。 周りを見渡すと、ピンクや黄色の丸い風船がふわふわと浮いていて、どこから来たのかも分からないけれど、なんだか夢の中みたいな気分にさせてくれます。空は青く澄んでいて、太陽の光が柔らかく降り注ぎ、私の肩に暖かさを感じさせてくれます。まるで風船たちが「もっと先へ行ってみなよ」と私を誘っているような、そんな感覚です。足元には鮮やかな色の水が広がっていて、鏡のように空を映しています。私がそっと水面に触れると、波紋がゆっくりと広がり、空が一瞬だけ歪むのが面白くて、何度も指を揺らしてみました。 風に髪が揺れるたび、頭に飾った花飾りも揺れます。ピンクや黄色の小さな花を編み込んだ髪飾りは、私が今日のために自分で作った特別なもの。どうしてもこの日、この場所で身につけたかったんです。風が花の甘い香りを運んでくれて、そのたびに心が落ち着いていく気がしました。 私が腰を下ろして座っている場所は、小さな台のようなものが水の真ん中に浮かんでいる場所。なんでこんなところに座れるのか、自分でもよくわからないけど、不思議と怖くはありません。むしろ、この台の上から空を眺めていると、自分が雲に乗っているみたいで、現実の世界から少しだけ離れた気分になれるんです。右手を後ろに伸ばして体を支えると、手のひらに温かい感触が伝わり、目の前の風景が一層鮮やかに見えました。少しだけ揺れる水面の上で、私は一人、ここにいることがとても特別なことのように思えてきます。 空は青く、遠くにはまだ誰も知らない場所があるかもしれないって思うと、胸が高鳴ります。実際にはただの空で、私の想像に過ぎないけれど、それでもこの広い世界に自分がどこかに繋がっている気がして、不安と期待が混じった気持ちになります。夏の陽射しは眩しくて、けれどもこの一瞬が永遠に続くように感じさせるから不思議です。手のひらにあたる温かさも、心地よい風も、全部がきっといつかは消えてしまう。でも、今だけはここに座って、空を見上げている自分が確かに存在しているのを感じたいんです。 私は深く息を吸い込み、目を閉じてみます。風が頬を撫で、遠くで鳥の鳴き声が響くと、まるで私に「これがあなたの夏の記憶になるんだよ」と教えてくれているみたいで、少しだけ胸が締めつけられるような感覚がありました。これが私の「自己発見」なのかもしれません。これまで自分がどんな存在なのか、考えたこともなかったけれど、ここでひとり空を見上げることで、自分がどこに向かっているのか、ほんの少しだけわかった気がします。 風船がひとつ、私のすぐそばをふわりと通り過ぎます。色とりどりの風船が、青空を背景にしてゆっくりと空へ昇っていくのを見つめていると、私もこの風船のように、少しずつ自分の殻から飛び立っていけるような気がしました。夏の終わりと共に、いつかはこの場所も、今日の出来事も忘れてしまうのかもしれないけれど、それでもこの瞬間だけは心に焼きつけておきたい。きっと、夏が終わっても、この空と私だけの思い出はずっとここに残っているから。 私は小さく微笑んで、最後にもう一度だけ空を見上げました。空にはまだ、無数の風船がゆっくりと漂っています。風が私の頬を優しく撫で、花飾りが揺れている音が小さく響く。その音は、夏が私に「また会おうね」と囁いているかのようです。 ----- この投稿、気に入っていただけたら嬉しいです！ハートマークタップで応援してね！