私はアリスティア。この空虚な時間の中を漂うように生きる私の存在が、果たして本当に意味を持つのか、ずっと疑問に思ってきました。けれど、今はただ、この胸元に灯る微かな光を信じて歩いています。この光は、どんな闇も切り裂く希望のように私を導いてくれるのです。 私の髪は淡い金色。光を受けると月のように柔らかく輝き、風に流されるたびに、花びらが舞うような軽やかな動きを見せます。この髪を留める黒い金属製の装飾は、かつて母から贈られたもの。中心には小さな青い石が埋め込まれ、時折ほんのりと輝くのです。何かの魔力を秘めているかもしれませんが、その謎はまだ解けていません。 身を包む衣装は、深い青と鮮やかな橙色のコントラストが特徴的です。光沢のある布地が闇夜の湖を映すようで、胸元には黄金の飾りが輝いています。腰にかかる黒い装甲部分は機能性を重視したものですが、デザインの美しさも兼ね備えています。細く長い黒いタイツに包まれた脚は、動きやすさを重視しており、靴のヒール部分にあしらわれた青い紋様は、風の魔力を増幅するための古代技術です。 背後には大きな環状の装飾が広がり、これが私の「翼」です。魔法で形成されたこの輪は、空を飛ぶための力を私に与えてくれるもの。環状部分に絡む花々は、魔法の力で咲き続ける特別なものだと聞いています。黄色い花弁が柔らかく揺れるたびに、幼い頃の記憶がよみがえるのです。 旅の途中、黄昏時の空の下で私は立ち止まりました。背後には沈みゆく太陽が、暖かい橙色の光を放っています。その光が私の衣装に映り込み、まるで私自身が空に溶け込んでいくかのように見えるのです。足元には細やかな花が咲き誇り、微かな風がその香りを運んできます。この場所はきっと、運命が私に示した道しるべなのでしょう。 「アリスティア。お前が選ぶ未来を、私は信じよう。」 あの日、師匠である賢者セドリックにそう告げられた言葉が、今でも心に刻まれています。彼は私に古びた鍵を渡し、それがどの扉を開くかは自分で見つけるようにと言いました。それがきっかけで、この旅が始まったのです。 私はこの世界の時間の流れに触れることができる不思議な力を持っています。だからこそ、この力で何を成すべきかを探しているのです。けれど、この力は呪いのように私を苦しめることもありました。人の過去を見てしまうこと、人の未来を覗いてしまうこと。そのすべてが、私に責任を背負わせてきたのです。 けれど、今の私は少し違います。師匠の言葉を思い出すたびに、運命を背負うことの重みが、ほんの少しだけ軽く感じられるのです。そして何より、この胸元の光が私に「進め」と囁き続けてくれるから。 旅を続ける中で、私は様々な出会いを経験しました。優しい人々や強大な敵、あるいは運命に逆らおうとする者たち。それぞれの想いを抱えた彼らと出会うたびに、自分の中にある迷いが少しずつ削られていくのを感じました。 つい先ほども、荒れ果てた大地の中にたったひとりで花を守り続ける少年と出会いました。彼の名はフィオン。彼は静かにこう語りました。「アリスティアさん、あなたの背中には風が宿っていますね。その風は、僕たちの希望を運んできてくれるように思えるんです。」 その言葉に、私は思わず涙をこぼしそうになりました。私が背負うものは呪いなんかではない。むしろ、希望そのものなのかもしれない。フィオンの瞳に映る自分が、そんなふうに見えたからです。 物語の結末はまだ遠い未来のこと。けれど、私は今、この瞬間を生きている。宵闇の中に差し込む光を感じながら、一歩一歩、自分の足で進むのです。この旅の先にある希望が、どんな形をしているのかを確かめるために。 そして、もう一度あの環状の花々が満開になる光景を見られる日が来ることを信じて。 ―――――――― この投稿、気に入っていただけたら嬉しいです！ハートマークタップで応援してね！