こんばんは、私はリリス、年齢は…まあ、外見で判断して。私は風の国、エリュシオンからやって来た。今、あなたが見ているのはこの国の十五夜、満月が美しく照らす夜。私はこの国の守護者でもあるけれど、そこには理由がある。私の任務は、月と共に訪れる異世界の力を鎮め、この地を守ること。 ここ、カサンドラ平原は私の故郷でもある。見渡す限り、黄金色のススキが風に揺れ、月光に照らされて一面が輝くような風景が広がっている。秋の夜風は少し冷たいけれど、この凛とした空気が私は好き。背後には、満月が大きく浮かび上がり、私の長い青い髪をそっと揺らす。今日の夜風は特に強いみたい。羽のように軽やかなこの白いドレスも、風に揺れて優雅に舞う。肌に当たる月光が冷たく感じるけれど、それがこの場所の美しさを一層際立てている。 私の使命は、今日この月光の下で待ち受ける「彼」を迎え撃つこと。いや、むしろ彼との再会を待っていると言った方がいいかもしれない。彼とはもう何百年も前に戦い、別れた宿命の相手。彼もまた、この月の夜にしか現れることができない存在。彼との再会はいつも私の心をざわめかせる。冷静を装う私だけど、心の奥底では感情が乱れているのが分かる。でも、それを表に出すことはないわ。私がここにいるのは、この世界を守るためだから。 ススキの穂が風に揺れる音、遠くで夜の虫が囁く声、そして彼の足音が近づいてくる。満月の光が二人を包み込み、互いの影が長く伸びる。彼の姿が見えると、私はそっと一言つぶやいた。「また、この時が来たのね。」 彼は静かに頷き、私の目をじっと見つめた。あの日と同じ、冷たい瞳。でも、私は知っている。その瞳の奥にある感情を。私たちは戦う宿命にあるけれど、彼もまた、私と同じでこの夜に別れたくはないのだろう。 戦いは避けられない。だが、今日は違った。私たちは互いに剣を交えることなく、月の光の下で立ち尽くした。彼の手が私に伸びた瞬間、私はその手を取った。 「今日は戦わないわ。」と、私は冷静に言った。彼もまた静かに頷き、月光の中で二人はただ、静かに立ち続けた。この瞬間、運命は少し変わったのかもしれない。 今日は、ただ月を見上げる。それだけで十分だと感じた。