今日は待ちに待った文化祭。青空の下、学園中がキラキラと輝いている。私は制服の襟元を整え、校門を通り過ぎた。名前は美咲（みさき）。2年生。文化祭での私は、誰よりも元気で陽気なムードメーカー…のはず。白いセーラー服にネイビーのスカーフが映えて、髪の毛は自然な黒。明るい表情でみんなと笑い合う。今日は、そんな姿でみんなを楽しませるつもりだった。 校舎に一歩入ると、活気に満ちた空気が一気に襲いかかってくる。廊下を走り回る生徒たち、教室から漏れ聞こえる笑い声、どこかから甘い焼き菓子の香りが漂ってくる。賑やかさに負けじと、私も心の中でテンションが上がっていく。だって、今日はこの文化祭で思いっきり楽しむって決めてるんだもん。 教室の中も大盛況。友達のあかりや奈緒も、何かに夢中になっているみたいで、時折こっちに向かって手を振ってくれる。あかりは美術部で、廊下に並べられたポスターや展示物の準備で忙しそう。奈緒は家庭科部だから、手作りのお菓子を売ってるみたい。文化祭って、こうやって普段見られないみんなの姿を垣間見られるから好き。 一息つこうと思って、校庭に出た。出店がずらりと並んでいて、焼きそばやたこ焼き、綿菓子の甘い香りが鼻をくすぐる。目の前には青空と、照り返しで眩しく光る制服の白。私の姿が、まるで映画のワンシーンみたいに映えている。赤いスカーフが青空の下で鮮やかに見えて、カメラを向けられるとつい笑顔を浮かべちゃう。 ふと、周りを見回すと、見慣れない顔の男子がちらほら。あれ？うちの学校にこんな人たちいたっけ？なんか、妙に緊張しているような…でも、よく見れば、みんなそれぞれの友達と一緒に来ているようで、楽しそうにしている。あれは…たぶん他校の生徒だ。やっぱり文化祭って、いろんな人が集まって賑わうんだなぁ。 それから、ふらっと教室を巡っていると、ある教室が妙に静かで気になった。入ってみると、そこで見つけたのは「ミステリーハウス」。文化祭の目玉企画のひとつで、部屋中が不気味な装飾に覆われていて、入るだけでゾクッとする。うーん、でもちょっと怖そうだし、入るのは躊躇しちゃうな…。でも、好奇心には勝てず、つい足を踏み入れてしまった。 中に入ると、暗い照明があちこちに影を作り、なんとも言えない雰囲気を醸し出している。さっきまでの陽気な雰囲気が嘘のように、一瞬で空気が変わる。周りにはかぼちゃのランタンや、おどろおどろしい顔をしたマスクが飾られていて、背筋がゾクゾクする。 途中で道に迷い、さらに暗闇に包まれた部屋に迷い込んだ。あれ？これはどうやって進むんだろう…。あちこちにヒントらしきメモが貼られているけれど、なかなか謎が解けない。そんな時、不意に後ろから声が聞こえた。「ここ、助けが必要？」振り返ると、そこには同じクラスの優斗が立っていた。どうやら彼もミステリーハウスに挑戦していたみたいだ。 「え？優斗もいたの？助かるー！」思わず安心して、いつもの調子で笑いかけると、優斗も照れくさそうに笑ってくれた。二人で協力しながら謎を解いていくと、少しずつ進むことができた。この先どうなるか、わくわくしながら、私たちは最後の部屋にたどり着いた。 しかし、最後の部屋に待っていたのは、思いもよらないサプライズだった。部屋に入ると、突然明るいスポットライトが私たちに向けられ、照明が一気に切り替わる。そして、パッと周りを見渡すと、クラスのみんなが私たちを取り囲んで拍手をしているではないか。 「え、なにこれ？どういうこと？」驚きで声をあげる私に、あかりがにやりと笑って近づいてきた。「実はね、これが文化祭のサプライズイベントだったんだよ、美咲と優斗をくっつけるためのね！」ええー！？まさか、こんな大掛かりな企画が私のためだったなんて。 優斗も真っ赤な顔で隣に立っていて、なんとも言えない表情を浮かべている。でも、そんな優斗の照れた顔を見ていると、なんだか悪くない気がしてくる。クラスのみんなの笑顔と拍手の中で、私はふと胸の奥がぽかぽかと温かくなるのを感じた。 文化祭の終わりにこんな素敵なサプライズが待っているなんて、思ってもみなかった。普段はクールで大人しい優斗も、今日だけはなんだかちょっと特別に見える。私は恥ずかしさと嬉しさで胸がいっぱいになりながら、また明日も笑顔で登校するんだろうな、と少しだけ未来を想像してみた。 「これからもよろしくね、優斗！」 ------ この投稿、気に入っていただけたら嬉しいです！ハートマークタップで応援してね！