私の名前はイチカ。ふわりとした白いワンピースに、黒と赤のリボンがアクセント。胸元のボタンは小さな星みたいにキラキラ輝いていて、袖口はきちんと締まっている。足元には黒いブーツが自慢で、見た目以上に走りやすいのが嬉しいところ。頭には丸い白いベレー帽、まるでおとぎ話から飛び出してきたみたいな姿で、今日は街の外れにある「苺の丘」に来ていた。 辺り一面、真っ赤な苺が広がっていて、光が当たるとツヤツヤと輝く。まるで苺たちが「こっちにおいでよ！」と手招きしているみたい。私の目の前にあるのは、あの子たち、あの赤くて甘い香りの苺たち。心がウキウキして、ついスキップしちゃう。 ふと気づくと、丘の上には誰もいなくて、まるで世界中で私ひとりだけがここにいるような感じがした。太陽の光が私の背中を温かく照らし、影がくっきりと地面に映る。その影が、苺たちと一緒に踊っているみたい。空気も澄んでいて、少し甘酸っぱい香りが漂っている。この瞬間、ここはただの苺畑じゃなくて、私だけの秘密の魔法の世界だって気がした。 「今日もたくさんの苺が元気そうで、何よりだね！」 苺たちには返事を期待していないけど、なんだか苺たちが小さな声で「ありがとう」って言ってくれた気がする。私が手を伸ばして苺を摘もうとすると、指先が光に触れて、少し暖かい。やっぱり、ここは私だけの魔法の場所だ。苺のひとつを摘んで、口に運ぶ。甘酸っぱくて、じゅわっと広がるフレッシュな味がたまらない。 「イチカちゃん、苺が好きでよかったよね」 自分にそう言い聞かせながら、私はこの丘を駆け巡る。苺畑を踏み荒らさないように、そっとだけね。風が髪を揺らして、帽子が少し斜めになる。少し気にしながらも、そのまま走るのが楽しい。私の笑い声が、苺たちの間をすり抜けていく。 「ねえ、苺たち、今日も一緒に冒険しようよ！」 苺たちが何か返事をしてくれるわけじゃないけど、でもわかるんだ。ここにいる限り、私はずっと苺たちと友達なんだって。どこかに大きな木があって、その影に腰掛けながら、私はこの場所での思い出を思い返す。小さい頃からここに来るたびに、何か新しい発見があった。毎年、少しずつ変わる苺の成長を見ていると、自分も少しずつ成長している気がするのだ。 風が吹いて、苺の葉がざわざわと音を立てる。その音が「もっと自分を信じてごらん」と私に語りかけているように聞こえた。私もそろそろ大人にならなきゃいけないってわかってるけど、この苺畑にいると、そのままの自分でいてもいいんだって思えるんだ。 夕方になって、空がオレンジ色に染まる頃、そろそろ帰ろうかと苺たちに別れを告げる。ちょっと名残惜しいけれど、またすぐに会えるからね。心の中で「ありがとう、またね」ってつぶやきながら、丘を降りる。 家に帰る途中、ふと振り返ると、苺の丘が夕日に照らされて、まるで赤い宝石の山のように輝いていた。その光景を見た瞬間、なんだか胸がいっぱいになって、自然と笑顔がこぼれる。 「また明日も、会いに来るからね」 この丘は、私の特別な場所。ここでのひとときが、私の無邪気さと喜びを支えてくれる。きっと、どんなに大人になっても、この場所があれば、私はいつでも元気になれるんだろうなって思う。