[ (1) のつづき ] 「あなた…もしかして」 女将さんの手が震えている。私も胸が高鳴った🫀 「私の母は養子なんです。実の親については何も教えてくれませんでした」 女将さんは写真を指さした。 「この赤ちゃんは、私の娘が産んだ子。つまり私の孫。生まれてすぐ、娘は東京へ出て行って…」 頭の中でピースが合わさっていく。毎年誕生日に母が作ってくれたみそ汁。「あなたのルーツよ」と言って飲ませてくれたあのみそ汁🍵 「母が亡くなる前、『本当の故郷を知りたければ、雪解けの温泉街へ行きなさい』と言われました」 女将さんの目から涙があふれ落ちた。 「あなたが…茜なの？」 名前を呼ばれた瞬間、体の中で何かが共鳴した。記憶の扉が開いたように、幼い頃の感覚が蘇る。このみそ汁の味。このにおい。 「おばあちゃん…？」 その言葉は、自然と口から零れた👵👧 女将さんと抱き合う。時間も空間も超えて、血のつながりが確かめあうように。 後から知ったことだけど、母は10代で私を産み、都会で夢を追うため、実家に私を置いていくつもりだった。でも最後の最後で、私を連れて行くことを決めた。女将さん…私の祖母は、だから「雪解け草」入りのみそ汁を作り方を娘に教えたのだ。 「これがあれば、いつか帰ってくるきっかけになるかもしれない」と🌱 翌日、女将さんは私に山を案内してくれた。雪解け草が芽吹く場所。女将さんの旦那さん…私の祖父が好きだった釣り場。 一週間の予定だった旅は、一ヶ月に延びた。イラストの仕事もここでできる。東京のアパートは解約し、猫のミーちゃんも呼び寄せた🏠🐱 今では、私も女将さんと一緒にみそ汁を作る。 「秘密の材料は？」とお客さんに聞かれると、女将さんと目を合わせて笑う。 「愛情です」と答える。 それは嘘じゃない。でも本当の秘密は、みそ汁の向こう側にある。失われていた絆の物語。そして、雪解け草の苦みと甘さが教えてくれる人生の真実。 旅人たちは、このみそ汁を飲んで何かを感じるらしい。故郷の味。そう言って、涙ぐむ人もいる。 みそ汁は、魂の記憶を呼び覚ますのかもしれない🥣✨ [ おわり ]