私の名前は佐藤アカリ。高校1年生で、今年で16歳です。 この夏は、私の人生を大きく変えることになりました。不思議な手紙との出会いが、臆病だった私の背中を優しく押してくれたんです。 私が通う青葉高校は、駅から徒歩15分ほどの住宅街にあります。窓からは遠く富士山が見える、歴史のある学校です。 正直に言うと、私は学校生活に馴染めていませんでした。クラスメイトと話すのは苦手で、部活動には入らず帰宅部。母は心配して「アカリ、友達と遊びに行かないの？」と声をかけてくれますが、その度に「今度ね」と曖昧に答えていました。 そんな私の日課は、下校時に寄り道をすること。古い商店街を抜けて、誰も通らない裏路地を歩くのが好きでした。 ある蒸し暑い7月の午後、私はいつもと違う道を選びました。古びた木造アパートの裏手に、黄色く塗られた大きな木箱が目に留まったんです。 近づいてみると、木箱の中には誰かの置き忘れたようなノートが1冊。開いてみた瞬間、私の心臓は大きく跳ねました。 「親愛なる過去の私へ」 そう書かれた文字は、紛れもなく私の筆跡でした。でも、私はこんな手紙を書いた覚えなんてありません。 手紙には不思議な温かみがありました。少し黄ばんだページには、優しい言葉が連なっています。 「この手紙を読んでいるアカリへ。あなたは今、誰かと心を通わせることに臆病になっているはず。でも、この夏はきっと特別な出会いがあります。その時は、勇気を出して一歩を踏み出してみて」 私は思わず周りを見回しました。これは誰かのいたずら？でも、この筆跡は間違いなく私のもの。それに、私の心の内を誰が知っているというの？ その日から、この場所は私の秘密基地になりました。古いベンチを拾ってきて置き、100均で買った観葉植物を飾りました。誰も来ない裏路地の、私だけの特別な空間。 「おや、ここに人がいたんだ」 ある日、突然声をかけられて飛び上がりました。振り返ると、私と同じくらいの年頃の男の子が立っていました。茶色い髪が優しい風に揺れています。 「僕、田中ハルキ。このアパートの2階に住んでるんだ。君はよくここに来てるの？」 ハルキの笑顔には不思議な魅力がありました。人見知りの私なのに、その場で気づけば話し込んでいました。彼は絵を描くのが好きで、スケッチブックを持ち歩いているんだと言います。 「このベンチ、僕も一緒に使わせてもらっていい？」 私は小さくうなずきました。それから毎日、秘密基地には二人の居場所ができました。ハルキはスケッチブックに絵を描き、私は持参した本を読む。時々お互いの趣味の話をして、笑い合う。 そんなある日、ノートに新しい手紙が書き加えられていました。 「大切な友達ができましたね。でも、この出会いには小さな試練が待っています。その時、あなたはどうする？」 私はまた、誰かに見透かされたような気持ちになりました。そして数日後、ハルキは重大な告白をします。 「実は、僕の家族、来月には引っ越すことになったんだ」 夕暮れ時の秘密基地で、ハルキはそう告げました。父親の転勤で、九州に行くのだそうです。 その瞬間、私の中で何かが凍りついたような気がしました。やっと見つけた大切な友達。でも、また一人になってしまうんです。 「アカリは絵のモデルになってくれない？最後の思い出に、君の絵を描かせて」 ハルキは真剣な表情で言いました。私は少し戸惑いながらも、静かにうなずきました。 その日から、放課後の秘密基地で、私はハルキの前でじっと座っています。夏の陽射しが木々の間から差し込み、心地よい風が私たちの周りを優しく包みます。 「アカリって、本当は寂しがり屋なんだね」 ある日、ハルキが突然言いました。私は驚いて顔を上げます。 「でも、強がりなんだ。誰かと仲良くなりたいのに、自分から一歩を踏み出せない」 ハルキの言葉は、まるで私の心を見透かしているようでした。目から涙がこぼれそうになります。 「私ね、実は中学の時、親友だった子に裏切られたの」 気づけば、今まで誰にも話せなかった過去を話していました。親友が私の秘密を他の子に広めてしまい、クラスで孤立した辛い記憶。 「それから、深く人と関わるのが怖くなった。誰かを信じても、また傷つくんじゃないかって」 ハルキは黙って私の話を聞いてくれました。そして、スケッチブックに描かれた絵を見せてくれたんです。 （つづく） 全部を載せたいのですが、残念ながらこちらのキャプション欄には文字の制限があるため、もし続きが気になる方は私のnoteをご覧ください。気に入っていただけたらハートマークをタップお願いします！