高橋勇太は、どこにでもいる平凡な中学生――のはずだった。 身長は平均、成績は微妙、運動神経はそこそこ。学校では特に目立たず、部活も帰宅部。クラスの女子から「消しゴムを貸して」と頼まれたとき、「おおっ、ついに俺にもモテ期が！？」と勘違いするレベルの一般市民。 しかし、彼には一つだけ得意なことがあった。 それは、「鬼ごっこ」だ。 放課後、公園で繰り広げられる全力鬼ごっこバトル。それが勇太の青春だった。 「俺を捕まえられるもんなら捕まえてみろ！」 そう叫びながら全力疾走する彼は、まるでフィールドの王者。クラスメイトの太一やケンジが追いかけても、まるで掴みどころのない風のように駆け抜ける。 「勇太、マジで速すぎんだろ！」 「お前の家、忍者の末裔か！？」 「いや、たぶんゴキブリの親戚だな」 罵詈雑言を浴びながらも、勇太は誇らしかった。授業では目立たない彼も、鬼ごっこの時間だけはヒーローになれる。 しかし、その日、公園の片隅で見つけた小さな指輪が、すべてを変えた。 泥まみれで光を失っていたその指輪には、奇妙な刻印が刻まれていた。 《この指輪をはめし者、鬼となるべし》 「……なんだこれ、カッケェじゃん」 何も考えずに指にはめたその瞬間――世界が激変した。 視界が鮮明になり、空気が肌にまとわりつくように感じる。心臓の鼓動が爆音のように響き、全身に熱い力がみなぎる。 「おおっ！？　なんだこの感覚！」 次の瞬間、勇太は自分の足が地面を蹴ったことにすら気づかないまま、異常な速度で公園を駆け抜けていた。 「うぉおおおお！？！？　はっや！！！？」 まるで重力が存在しないかのような軽やかさ。飛ぶように走るという表現が、生ぬるく感じるほどの速度。 「勇太！？　お前、今瞬間移動した！？！？」 「えっ、ていうかどこ行った！？」 振り返ると、太一とケンジがぽかんと口を開けている。 気づけば、公園の端から端まで、一瞬で移動していた。 「すげぇ……！　これが……鬼の力……！」 勇太は興奮しながら、自分の手を見つめた。 しかし、その時だった。 突如、脳内に奇妙な声が響く。 『力の代償として、お前は“笑い”を生み出さねばならぬ』 「は？　笑い？」 『他人を笑わせられなければ、その力は消える。さあ、存分に人を笑わせるのだ』 勇太は思った。 ――いや、聞いてないんだけど！？！？ まさかの力の維持条件。まるで呪いのようなこの契約に、勇太は途方に暮れることとなる。 しかし、この時の彼はまだ知らなかった。 勇太は、公園のベンチに座り込んだまま、頭を抱えていた🤯 「笑わせないと力が維持できない……？」 そんな理不尽な話があるか！？ 超スピードを手に入れたと思ったら、まさかの〝お笑いノルマ〟。ヒーローになれるかと思いきや、まさかの芸人枠🎭 「おい勇太！　さっきのアレ、どうなってんだよ！」 太一とケンジが駆け寄ってくる🏃💨 「お前、今、公園の端から端まで一瞬だったぞ！？」 「忍術！？　魔法！？　それとも……カブトムシの進化系か！？🐛➡🦋」 「おい、なんで俺が昆虫枠になってんだよ！」 ツッコミを入れた瞬間、体がふわっと軽くなった😳 「ん？」 足元を見つめると、先ほどのスピードがほんの少しだけ戻ったような感覚がある。 まさか……。 勇太は試しに深呼吸し、声を張り上げた。 「えー、ここでクイズです！ 『公園で鬼ごっこ中に突然超スピードを手に入れた男が取るべき行動は？』 ①実験的に走り回る ②科学者に相談する ③すべてを受け入れてラーメンを食べる🍜」 「いや、③は関係なくね！？🤣」 その瞬間、体がふわっと軽くなる。 「……マジか！？」 勇太は確信した。 人を笑わせるたびに、鬼の力が維持される仕組みらしい🤯 「おいおい……何このお笑いバフ」 「でもさ、笑わせ続けなきゃダメなんだろ？ つまり、勇太は常に面白いことをし続けなきゃいけないってことか？」 「……それって……詰んでね？😇」 「お前ら、もうちょい優しくしろよ！！！」 その時だった。 公園の入り口に、黒スーツの男が二人、静かに立っていた。 ただならぬ雰囲気。明らかに〝普通〟の人間じゃない🕶️😠 「おいおい……ついに俺もスカウトか？ 芸能事務所？ それともヒーロー協会？」 勇太が軽口を叩くと、男の一人がスッとポケットから何かを取り出した。 黒い封筒。 そこには赤い字で、こう書かれていた。 《鬼狩り協会》 「……は？」 （つづく） 文字の制限があるため、続きは私のnoteをご覧ください。気に入っていただけたらハートマークをタップお願いします！