私の名前は春野さくら。22歳、趣味は写真撮影とストリートアート。モデルとして活動しているけど、最近は心が空っぽになってきた気がする。 鏡に映る自分を見つめる。ピンクの髪が肩にかかり、大きな青い瞳が不安げに揺れている。白いタンクトップには、カラフルなペイントが飛び散ったようなデザイン。露出した腹部がちょっと恥ずかしい。ローライズのジーンズは、細い腰にぴったりとフィットしている。 「はぁ...」 ため息をつきながら、スタジオの壁に寄りかかる。背景には鮮やかな青、黄、ピンクのグラフィティアートが広がっている。普段なら、この色彩の洪水に心躍るはずなのに。 カメラマンの声が響く。「さくらちゃん、そのままの表情でOK! 儚げな感じ、すごくいいね」 この仕事、本当に向いているのかな。毎日カメラの前で笑顔を作るのに疲れてきた。でも、これしか能がないんだから... 撮影が終わり、休憩室に戻る。スマホを開くと、彼からのメッセージ。 「今日も遅くなる。待たなくていいよ」 またか。最近、彼との時間がどんどん減っている。モデルの彼女なんて、面倒くさいだけなのかも。 外に出ると、夕暮れの街が私を包み込む。ネオンサインが瞬き始め、人々の喧騒が耳に入る。ふと、路地裏に目をやると、新しいグラフィティアートが目に入った。 鮮やかな色使いの中に、悲しげな表情の少女が描かれている。まるで私の心を映しているよう。 思わずスマホを取り出し、シャッターを切る。この瞬間、何かが心の中で動いた気がした。 「これ、すごくいいね」 後ろから声がする。振り返ると、見知らぬ青年が立っていた。彼の眼差しは、アートではなく私に向けられていた。 「ありがとう...」 照れくさそうに答える私。彼の優しい笑顔に、少し心が軽くなる。 「僕、美術学校で教えてるんだ。このアート、君が撮った写真で再現してみない？」 その言葉が、私の人生を変えることになるとは、まだ知らなかった。 (続く...)