私の人生が180度変わったのは、あの不思議なカフェに足を踏み入れた瞬間からでした。 「もう！全然頭に入らないよ～」 数学の教科書を思いっきり机に投げ出して、私は天井を見上げながら大きなため息をつきました。私、橘咲（たちばなさき）、17歳。成績は中の下、運動神経は壊滅的、特技と言えば寝る事くらいのごく普通の女子高生です。 青春町立第一高校、通称「あおはる」の2年生。来週は期末試験。このままでは赤点確定で、夏休みの補習地獄が待っています。 そんな試験勉強の真っ最中、私は学校帰りにふらりと立ち寄った『アンティーク・メモリーズ』というカフェで、運命の出会いを果たすことになるのです。 このカフェ、外観は英国の古城のミニチュアみたいな佇まい。レンガ造りの壁には蔦が絡まり、ステンドグラスの窓からは柔らかな光が漏れています。 「いらっしゃい、お嬢さん」 店内に入ると、銀髪のマダム・ローズが優雅な微笑みで出迎えてくれました。彼女、実は謎の多い女性なんです。年齢も素性も誰も知らない。でも、この街で一番美味しいスコーンを焼く達人として有名です。 私の定位置は、窓際の一番奥のソファ席。古びた赤いビロードの生地が、どこか懐かしい雰囲気を醸し出しています。 いつものように荷物を置いて、メニューを手に取ろうとした時です。 「契約、しませんか？」 突然、か細い声が聞こえてきました。びくっとして振り返ると、テーブルの上に小さなぬいぐるみが座っていたのです。 「えっ、今、誰かが...？」 私は辺りを見回しましたが、近くには誰もいません。マダム・ローズはカウンターで本を読んでいて、他のお客さんは皆、遠くの席にいました。 そのぬいぐるみは、真っ白な体に赤いハートが縫い付けられた、手のひらサイズの可愛らしいものでした。でも、どこか見覚えのあるデザイン。 そして何より気になったのは、そのぬいぐるみが小さな手に持っている一枚のカード。「願いを叶えます。ただし、代償あり」と、綺麗な筆記体で書かれています。 「疲れてるのかな...私」 目を擦って、もう一度ぬいぐるみを見つめました。するとっ！ 「やあ、もう一度言うよ。契約、しませんか？」 確かに、そのぬいぐるみが口を動かして話しかけてきたのです！ 「ひっ...！」 思わず小さな悲鳴を上げそうになりましたが、急いで手で口を押さえました。周りのお客さんに気付かれたら大変です。 「驚かないでよ。僕はクー。君の願いを叶えるために来たんだ」 ぬいぐるみ...いや、クーは、まるで当たり前のように話を続けます。その声は、少年のような、でも人形らしい不思議な響きを持っていました。 「願い...そう！数学の試験！」 その瞬間、私の頭に閃きが走りました。来週の試験のことで頭がいっぱいだった私は、つい、 「ねぇ、試験に合格できるようになる？」 と、聞いてしまったのです。 「もちろん。でも、代償は...」 クーは意味深な笑みを浮かべながら、契約のカードを差し出してきました。 今思えば、もっと慎重になるべきでした。でも、試験のことで頭がいっぱいだった私は、カードに書かれた細かい文字も読まずに、うっかりサインしてしまったのです。 その瞬間、カードが光り始め、クーの体も淡く輝きました。 「よーし！これで契約成立！今日から君の家で同居だよ！」 クーは突然、テーブルの上で飛び跳ね始めました。 「えっ！？ちょっと待って！同居って...」 私が困惑する間にも、クーはすでに私のカバンの中に飛び込んでいました。 夕暮れ時のカフェに、私の悲鳴のような声が響き渡ります。 「そんな話聞いてないよーっ！！」 マダム・ローズはそんな騒動を見て、くすくすと笑いながらティーポットにお茶を注ぎ足していました。まるで、全てを知っているかのように。 こうして、私の平凡な日常は、突然の同居人を得て、とんでもない方向へと走り出すことになったのです。ああ、せめて契約書の細かい文字くらい読んでおけば良かった...。 カフェを出た瞬間から、私の人生は完全にカオス状態に突入しました。 「ねぇねぇ、カバンの中が暗いよ～。窮屈だよ～」 （つづく） 全部を載せたいのですが、残念ながらこちらのキャプション欄には文字の制限があるため、もし続きが気になる方は私のブログ「MochiMermaid’s AI Art Adventures」やnoteをご覧ください。気に入っていただけたらハートマークをタップお願いします！