「また、アラート…！」 心臓が跳ね上がる。 オフィスに張り詰めた静寂を切り裂くように、 私のデスクのモニターが赤く点滅している。 時刻は深夜2時を回っていた。 ここは、大手製薬会社、神崎製薬の本社ビル最上階にある情報システム部。 窓の外には東京の夜景が広がるが、 私、美咲の目に映るのは、無機質なモニターの光だけだ。️ （情報システム部、通称「情シス」は、会社のITインフラ全体を管理する部署。 ネットワーク、サーバー、セキュリティ… 会社の生命線とも言えるシステムを24時間365日見守っている、縁の下の力持ち、みたいな存在。） アラートが示すのは、社内ネットワークへの不正アクセス試行。 最近頻発している、厄介なタイプの攻撃だ。 「ブルートフォースアタック…」 つまり、パスワードを片っ端から試していく、古典的だけど効果的な攻撃手法。 （ブルートフォースアタックは、辞書攻撃とも呼ばれる、サイバー攻撃の一種。 コンピューターを使って、考えられるあらゆるパスワードの組み合わせを試していく、力ずくの攻撃方法。 例えるなら、鍵穴にありとあらゆる鍵を順番に差し込んでいくようなもの。）️ 私はマウスを握りしめ、キーボードを叩く。⌨️ 指先が冷たい。 過去の経験が、嫌な予感を呼び起こす。 私がまだ前職の外資系IT企業にいた頃。 同じような攻撃を受け、大切なデータを失ったことがある。 そのデータは、私にとって、いや、会社にとって、かけがえのないものだった。 その時の後悔と怒りは、今でも私の胸を締め付ける。 （あの時、もっと早く気づいていれば… もっと何かできたはず…） その苦い経験が、私をセキュリティの道へと駆り立てた。 だからこそ、神崎製薬への転職を決めたのだ。 ここは、個人情報や研究データといった、極めて重要な情報を扱う会社。 守るべきものが、たくさんある。️ しかし、現実は甘くなかった。 神崎製薬は、歴史のある大企業だが、 セキュリティ意識は、正直、低いと言わざるを得ない。 「前例がない」「そこまでやる必要はない」 上層部は、私の提案をことごとく却下してきた。‍♀️ まるで、古い城壁に囲まれた城のようだ。 外敵の脅威を知らず、平和ボケしている。️ そんな状況に、私は焦りを感じていた。 そんなある日、私は社内ネットワークのログを調べていて、 奇妙なデータを発見した。 それは、通常ではありえない時間帯の、大量のデータ送信記録。 まるで、何者かが情報を外部に持ち出そうとした痕跡だった。 （ログは、コンピューターやネットワークの利用履歴を記録したもの。 例えるなら、監視カメラの録画映像のようなもの。 いつ、誰が、何をしたのか、後から確認することができる。） 私はそのデータを詳しく分析し始めた。 すると、驚くべきことが分かった。 データ送信先は、社外のサーバー。 しかも、そのサーバーは、最近、悪質なサイバー攻撃に使われたことが判明しているものだった。 （サーバーは、コンピューターネットワークにおいて、他のコンピューターにサービスを提供するコンピューターのこと。 例えるなら、情報の中継地点のようなもの。）️ 「まさか…内部に…？」 私の背筋に寒気が走った。 私は急いで上司の田中部長に連絡を取ろうとした。 しかし、時計を見ると、まだ深夜。 こんな時間に電話をかけるのは気が引ける。 それに、田中部長はどちらかというと、事なかれ主義。 私がどんなに危機感を訴えても、 「大袈裟だ」「様子を見よう」 と言われるのがオチだろう。 （田中部長は、情報システム部の責任者。 穏やかで人当たりは良いが、決断力に欠けるところがある。 新しいことには消極的で、現状維持を好むタイプ。）‍ 私はため息をつき、一人で調査を進めることにした。 まずは、データ送信に使われたアカウントの特定。 ログを丹念に調べていくと、 ある社員のアカウントが浮上してきた。 それは、営業部のエース、高橋健太。 社内でも有名なイケメンで、 女性社員からの人気も高い。 （高橋健太は、営業成績優秀な社員。 明るく社交的な性格で、誰からも好かれている。 まさか、彼が…？）‍♂️ 私は信じられない思いで、高橋のアカウントのアクセス履歴を調べた。 すると、驚くべきことに、 彼のアカウントから、機密情報にアクセスされた形跡がいくつか見つかったのだ。 しかも、そのアクセスは、データ送信が行われた時間帯と一致する。 （つづく） 全部を載せたいのですが制限があるため、もし続きが気になる方は私のブログ「MochiMermaid’s AI Art Adventures」をご覧ください。気に入っていただけたらハートマークをタップお願いします！