凍える街の大晦日 "Frozen Wishes in the Echo of Time"
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モデル:flux1-schnell
私の名前は鈴木紗枝、23歳です。実家の神社で巫女のアルバイトをしている大学院生です。母が早くに亡くなり、祖母に育てられましたが、去年の冬に祖母も天国へ旅立ちました。
今夜は大晦日。窓の外では、粉雪が街灯に照らされてキラキラと舞い踊っています。
私は祖母の形見の着物を大切に着付けています。不思議な模様の着物で、雪の結晶のような光る模様が浮かび上がっては消えていきます。赤い帯を締めると、まるで光の粒子が着物全体を包み込むような錯覚を覚えます。
「紗枝ちゃーん!」
玄関から声が聞こえてきました。親友の美咲です。彼女は私と同じ神社でアルバイトをしている同級生で、いつも明るく、時々ドジな女の子です。今夜は一緒に参拝に行く約束をしていました。
「ごめんね、もう少しで準備終わるから!」
私は急いで最後の仕上げをします。鏡を見ると、祖母にそっくりだと言われた黒髪が着物に映えています。
商店街は年越しそばを買い求める人々で賑わっていました。店先には「お正月福袋」の文字が躍り、提灯の明かりが雪に溶け込んでいきます。
「わぁ、紗枝ちゃんの着物、すっごくきれい!」
美咲が目を輝かせます。確かに、この着物には何か特別な雰囲気があります。祖母が最後に「大切な時まで取っておきなさい」と言い残した意味を、私はまだ理解していませんでした。
神社への参道に差し掛かったとき、突然の出来事が起こります。
「おや、その着物は運命の着物じゃないか」
澄んだ声が闇の中から聞こえてきました。振り返ると、そこには一匹の猫が座っていました。
月光に照らされたその猫は、想像を超える美しさでした。漆黒の毛並みは星空のように煌めき、瞳は琥珀色に輝いています。尻尾の先だけが純白で、まるで筆先を雪に浸したような優雅さです。そして何より驚いたのは、その口元に浮かぶ人間のような笑みでした。
「えっ、今、猫が...話した?」
美咲が私の後ろに隠れます。
「ふむ、その通り。私は此処の神使いを務める者だ。そしてその着物には、願いを叶える力が宿っている」
猫は優雅に前足を舐めながら続けます。
「ただし、気をつけなければならないことがある。無駄な願いをすれば、この街全体が凍りついてしまう」
その時、参道の階段を上がってきた声が聞こえました。
「おーい、紗枝ー!」
振り返ると、同じ神社で働く山田くんと、彼の友達の健一くんが手を振っています。二人とも法学部の4年生で、来年から社会人です。
「あ、みんなも参拝?」
私が声をかけると、山田くんが笑顔で近づいてきました。
「うん、バイトの打ち上げの後にね。おっ、それって祖母さんの着物?」
その瞬間、猫の言葉が頭の中で反響します。一つの願い。街が凍りつく可能性。でも、まさか本当に...。
「ねぇねぇ、願い事が叶うんでしょ?」
美咲が突然、話し始めます。どうやら猫の話を信じたようです。
「私、モデルになりたいな~。それとも宝くじが当たる方がいいかな?」
「えー、そんなの面白くないよ。」
健一くんが口を挟みます。
「せっかくだから、もっとユニークな願い事をしようよ。例えば...世界中の人が一日中ダンスしか踊れなくなるとか!」
「それって完全に迷惑では?」
山田くんが突っ込みを入れますが、目は輝いています。
「じゃあ、君はどんな願い事をするんだよ?」
「うーん、そうだなぁ...。全ての法律の条文が川柳になる、とか?」
「それ絶対カオスじゃない?!」
みんなが次々とふざけた願い事を言い始める中、私は猫の警告が気になって仕方ありません。本当に街が凍りつくなんて...。でも、この着物には確かに何か特別な力が宿っている気がするのです。
雪は次第に強くなり、街灯の明かりが幻想的な影を投げかけています❄️ 参道の石段には、すでに薄っすらと雪が積もり始めていました。
そして私は、この後に起こる途方もない出来事の予感に、背筋が少し寒くなるのを感じていました。
「あ!私の願い事が一番いいと思う!」
突然、美咲が叫びました。
「全ての人の頭の上に、その人の本音が吹き出しで表示される願い事!」
その瞬間、着物の模様が激しく光り始めます。
「待って、美咲ちゃん!」
私が止める間もなく、街全体が不思議な光に包まれました。
次の瞬間、私たちの頭上に半透明の吹き出しが現れ始めます。
「え?マジで叶っちゃったの?」健一くんの頭上には「実は就活全然うまくいってない...」という文字が。
「うわ、見ないで!」山田くんの頭上には「紗枝のこと、ずっと好きだった」という衝撃的な告白が。
(つづく)
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