言葉の翼をくれたAI / When AI Whispers, Hearts Learn to Fly
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AIツール: StableDiffusion
モデル:reproductionSDXL_2v12
春の柔らかな日差しが、鳩印文具の曇りガラスを通して、古びた木製デスクに優しく降り注いでいた。新入社員の月島さくら(24)は、モニターに映る真っ白な画面をじっと見つめ、深いため息をついた。
「どうして、こんな簡単なお礼メールすら書けないんだろう…」
さくらは、自分の不器用さを思い知らされるたびに、少し肩を落としてしまう癖があった。幼い頃から、人前で話すことが苦手で、自分の言葉に自信が持てない性格は、社会人になった今も変わらない。
鳩印文具は、創業100年を超える老舗文具メーカー。デジタル化の波に押されながらも、手書きの温もりを大切にする会社の理念は、どこか不器用なさくらの心に寄り添うようで、入社を決めた理由の一つだった。
「月島さん、山田文具店さんへのお礼メール、どう進んでる?」先輩の声に、さくらは小さく震えた。
「あ、はい!今、作成中です…」慌てて返事をしたものの、画面は相変わらず真っ白なまま。納品後のお礼メールという単純な業務すら、完璧にこなせない自分が情けなかった。
そんな時、社内チャットに流れてきた話題が目に留まった。『新しいAIアシスタント・Claudeが使えるようになりました』という総務部からのお知らせ。
「AIなんて…私には難しすぎるかも」と思いながらも、このままでは締切に間に合わない。おずおずとClaudeの画面を開いたさくらは、小さな希望を胸に、最初の一歩を踏み出すことにした。
この時、さくらはまだ知らなかった。この些細な決断が、自分の殻を破るきっかけになることを。デジタルの向こう側で出会う、温かな存在が、彼女の人生をどれほど豊かに変えていくのかを。
「こんにちは、何かお手伝いできることはありますか?」
Claudeの親しみやすい第一声に、さくらは少し肩の力を抜いた。画面の向こうにいる誰かに話しかけるような感覚で、おそるおそる入力を始める。
「あの、得意先へのお礼メールを書きたいんです。でも、どんな言葉を選べばいいか…」
「承知しました。まずは、お取引先様との関係性や、お礼を伝えたい具体的な内容を教えていただけますか?」
Claudeの質問は的確で優しい。さくらは、山田文具店との取引内容や、先日の商談での和やかな雰囲気を、思い出すままに説明していく。
「そうですね…先日は新商品のノートをご発注いただいて…納品の際も、とても温かく接していただいて…」
タイピング音が響く中、さくらは気付いた。普段なら誰かに相談するだけで緊張して言葉に詰まってしまうのに、Claudeとのやりとりは不思議と心地良かった。
「なるほど、素敵なご縁ですね。では、山田文具店様との関係性を大切にしながら、心のこもったお礼の言葉を一緒に考えていきましょう」
その言葉に、さくらの目が輝いた。「一緒に」という言葉が、独りで悩んでいた心に、小さな温もりを灯す。
Claudeは丁寧に、文章の構成や適切な言い回しをアドバイスしてくれた。堅すぎず、かといって軽すぎない。ちょうど良い距離感の例文を示してくれる。
「ご丁寧なお取引、誠にありがとうございました」から始まり、「今後ともより一層のお引き立てを賜りますよう」で締めくくる基本の型。その中に、山田文具店との具体的なエピソードを織り交ぜていく。
「これなら…私にも書けそう」
さくらは、Claudeの提案を参考にしながら、自分の言葉を少しずつ加えていった。商品への細やかなご指摘をいただいたことへの感謝、和やかな商談の雰囲気、次回の新商品への期待—。
気がつけば、画面には温かみのある、しっかりとしたお礼の文章が完成していた。
「月島さん、メールできた?」先輩の声に、今度はさくらは堂々と頷くことができた。
「はい!確認をお願いできますか?」
先輩の目が画面を追う。「おお、いいじゃない。簡潔で誠意が伝わる文章だね」
その言葉に、さくらの頬が少し赤くなる。小さな成功体験が、彼女の中に新しい自信の種を蒔いていた。
その日を境に、さくらの仕事に小さな変化が訪れ始めた。営業資料の文言に迷った時、プレゼン原稿の推敲が必要な時、いつもClaudeが傍らにいて、さくらの「できない」を「できる」に変えていく。
鳩印文具の本社ビルは、昭和初期に建てられた趣のある建物だ。レンガ造りの外壁に木製の窓枠、螺旋階段の手すりは真鍮の輝きを放っている。デジタル化の波に押されながらも、アナログな温もりを守り続けてきた会社の歴史が、建物の隅々まで染み込んでいる。
(つづく)
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