私には、誰にも言えない特技がある。それは、業務スーパーで「いいもの」を見つけ出す能力だ。 レジに並ぶ人々の背中を見つめながら、私は今日の戦利品を買い物かごに抱えていた。イタリア産の冷凍パスタに、ベルギー産のチョコレート。そして何より、私の密かな楽しみである冷凍の「ぷち大福」と「リッチチーズケーキ」。 「はぁ、また買いすぎちゃった…」 独り暮らしの私、佐々木遥が送る贅沢な夜。でも、これが私の至福の時間なんです。 広告代理店で働く私は、毎日締め切りに追われている。でも、この緑色の看板の店に足を踏み入れると、不思議と心が落ち着くんです。 東京・下町の古びた商店街の一角。そこに私の憩いの場所である業務スーパーがある。夕暮れ時になると、仕事帰りのサラリーマンや主婦たちで賑わう。 インスタグラムのフォロワーたちは、私の「掘り出し物」投稿を楽しみにしてくれている。「佐々木さんの投稿で買いに行きました！」なんてコメントをもらうと、密かに嬉しくなる。 実は、この趣味には切ない理由があった。母が他界する前、よく業務スーパーで買い物をしていたんです。「安くても、きちんと選べば宝物が見つかるのよ」って。 自然解凍で手軽に食べられる冷凍スイーツは、疲れた夜の私の癒し。特に「ぷち大福」の、もちもちした食感と上品な甘さは、母の手作りおやつを思い出させる。 でも今日、私はいつもと違う何かを見つけてしまった。普段は見かけない、不思議な包装の食材。これは一体…？ この発見が、私の人生を思いもよらない方向へと導くことになるなんて、その時はまだ知る由もなかった。 その食材は、透明な袋に入った乾燥キノコだった。ラベルには「松茸」の文字。驚くほど安価な価格に、思わず二度見してしまう。 「これ、本物なの？」私は商品を手に取り、パッケージをまじまじと観察した。業務スーパーでは珍しい国産表記。しかも、産地は長野県。 「佐々木さん、いつもの投稿楽しみにしてますよ」レジで会計中、いつもの笑顔が素敵な店員の山田さんが話しかけてきた。 山田さんは60代後半。この業務スーパーのベテラン店員で、私の"掘り出し物"趣味を理解してくれている数少ない理解者の一人だ。 「この松茸、気になるでしょう？実はね、今朝入荷したばかりなの。特別なルートで仕入れたみたいよ」 山田さんは周りを確認するように視線を配り、声をひそめた。「実は、この商品には面白い話があってね…」 家に帰る途中、私はスマートフォンで松茸について検索した。長野県の松茸は市場でも高値で取引される最高級品。なぜ業務スーパーで、しかもこんな価格で…？ アパートに戻った私は、まず「リッチチーズケーキ」を解凍させる。濃厚な口どけは、今宵の謎解きのお供にぴったりだ。 「お母さん、私、また不思議なものを見つけちゃった」ベランダから見える月に向かって、そっとつぶやく。 スマートフォンには、もう山田さんから1件のメッセージが届いていた。「佐々木さん、明日の朝、開店前に来てもらえませんか？松茸のことで、お話ししたいことが…」 私の中で、ジャーナリスト魂が騒ぎ始めた。広告代理店を選んだのは、本当は記者になりたかったから。この予期せぬ展開に、心臓が高鳴る。 キッチンでは、チーズケーキと一緒に「ぷち大福」も解凍中。今夜は謎解きの準備に、甘いものが必要だ。 翌朝、まだ街が目覚める前の午前6時。私は約束通り、業務スーパーの前で山田さんを待っていた。 「お待たせしました」鍵を手にした山田さんが、いつもより少し緊張した面持ちで現れた。 誰もいない店内は不思議な静けさに包まれていて、普段とは全く違う顔を見せているようだった。 「実はね、この松茸…私の故郷の山で採れたものなんです」山田さんは棚の間を縫うように歩きながら話し始めた。 「長野の小さな山村で、昔から松茸の名産地として知られていたの。でも、過疎化が進んで…」 山田さんの表情が曇る。「採る人がいなくなって、今じゃ山に眠ったままになっているのよ」 その時、私の中で何かが閃いた。「それって、記事にできるかもしれません！」 普段は広告の仕事をしているけれど、フリーのライターとしても細々と活動している。食のコラムを書いたこともある。 「若い人に、地方の食材の魅力を伝えられるかもしれない。SNSの影響力だって、使えるはず！」 山田さんの目が輝いた。「佐々木さん、今度の連休に、私の故郷に来てみない？松茸狩りの様子も見られるわよ」 （つづく） 文字数に制限があるため、続きが気になる方は私のブログ「MochiMermaid’s AI Art Adventures」をご覧ください。気に入っていただけたらハートマークをタップお願いします！