秋の訪れが心地よい公園に、私はそっと足を運んだ。澄んだ空気に包まれ、色づく木々が風に揺れている。ふわりと舞い落ちる葉が、まるで大地を柔らかく包み込むように広がっていた。 ベンチに腰を下ろし、私の目に飛び込んできたのは、一人の少女だった。彼女はチェック柄の大きなマフラーを肩に掛け、ピクニックマットの上に座っていた。その姿は、秋の風景に溶け込むように自然で、美しかった。 彼女の目はまるで澄んだ湖のように輝き、そこには穏やかな笑みが浮かんでいた。私は思わずその光景に見とれてしまった。彼女の前には、色とりどりの野菜や果物が詰まったお弁当が広げられており、それがこの平和な時間をさらに豊かにしていた。 私はその場でしばし立ち止まり、彼女の姿を眺めた。秋風が頬を撫で、木々の葉が静かに降り積もる音だけが響いている。何か特別なことが起こっているわけではない。それでも、この一瞬一瞬が、心に深く染み渡るような感覚があった。 彼女は、私の存在に気づくことなく、ただ静かにその時間を楽しんでいるようだった。私はその光景を目に焼き付けながら、心の中でそっと呟いた。「この瞬間が、ずっと続いてくれたら…」 その後、私は彼女に声をかけることなく、その場を去ることにした。しかし、あの穏やかな時間と、秋の風に包まれた彼女の姿は、私の心に深く刻まれている。 日常の喧騒から離れたこの瞬間が、私にとっての大切な宝物となったのだ。