深い森の中に、小さな村がありました。その村には、古くから伝わる恐ろしい言い伝えがありました。それは、昔、この森で迷子になった子供が、いつまでも村に戻れずに怨霊となってさまよっているという話です。 ある夏の夜、村の少年、太郎は、友達と森へ冒険に出かけました。日が暮れ始め、あたりは薄暗くなると、太郎たちは道に迷ってしまいました。辺りは静まりかえり、木々の葉がざわめく音だけが響きます。 「ちょっと、太郎、怖いよ……」 友達の女の子、花子は、震えながら太郎の腕にしがみついていました。太郎は、勇気を振り絞って辺りを見回します。すると、遠くに、ぼろぼろの服を着た子供が立っているのが見えました。顔は血で汚れており、不気味な笑い声を上げています。 「あれ、誰だ？」 太郎は、恐る恐る子供に近づいていきます。子供は、太郎に向かって手を差し伸べ、こう言いました。 「一緒に遊ぼうよ」 その声は、どこか寂しそうでした。太郎は、子供の手を取ろうとした瞬間、背後から冷たいものが首を締め付けられました。 「うわああああ！」 太郎は、恐怖のあまり気を失ってしまいました。 目が覚めると、太郎は家のベッドの上でした。昨夜の出来事は、まるで夢のようでした。しかし、首には、まだ赤い痕が残っていました。 それからというもの、太郎は、夜になると悪夢にうなされるようになりました。夢の中では、いつも同じ子供が現れ、自分と遊ぼうと誘ってくるのです。 そんなある日、太郎は、村の古老から、昔、この森で起きた悲しい話を聞きました。それは、太郎が見た子供の話でした。その子は、村の外からやってきた子供で、村の子供たちからいじめられていたのだそうです。ある日、子供は、森の中で一人、寂しく死んでしまったのでした。 太郎は、古老の話を聞いて、自分の行動を深く反省しました。そして、子供たちの霊を鎮めるために、森へお供え物をしに行きました。 森の中で、太郎は、子供の霊と出会いました。子供は、太郎を恨むどころか、優しく微笑んでいました。太郎は、子供に謝り、そして永遠の別れを告げました。 それからというもの、村には、奇妙な現象は起こらなくなったそうです。そして、太郎は、過去の過ちから学び、優しい心を持つ青年へと成長しました。